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罪と女王の教授のレビュー・感想・評価

罪と女王(2019年製作の映画)
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心から面白い!と大絶賛するほどではないのだが、観ながら引き込まれていく部分は大変多い。何より扱っている題材は少し違えど、鑑賞した映画館がアップリンクだったのもあり、それらに関する問題にも通じる、人間の表の功績と、裏側にある不誠実さがなかなか苦しくなる物語でもあった。

児童保護専門の弁護士という顔。感情は表に出やすいという性格。と同時に自身に不利な事柄にもつい口に出したり行動しやすいという危うさなど、トリーヌ・ディルホムス演じるアンネの巧みなキャラクター描写。
決して悪人ではない代わりに、無邪気で無意識にアンナを圧迫している夫のペーター。狡猾さをたたえているように見せてやっぱり孤独な子供でしかないグスタフを中心に、裕福で社会的にも恵まれているであろう家族の歪さと、「正しさ」に覆い隠された奥底にある卑怯さをじっくりと描いてみせている。

随所に散りばめられた人物の内面や性格。どこか白々しさすら感じるあの大きくて広い家。鬱蒼とした森や車やスマートフォンなど。いわゆる上流階級の生活がなにひとつ羨ましさを感じないほどに殺伐とした光景に映って見える。

その気まずさや居心地の悪さを抱えたまま。しでかした出来事が現実に像を結んだとしても、死んだ目で日常は変わらず進行していくラストこそ映画としては最高のカタルシスである一方。あまり好きではない「胸糞映画」というのがピッタリなほど、感じの悪い(褒めている)素晴らしい作品だと思う。
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