SatoshiFujiwara

カゾクデッサンのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

カゾクデッサン(2019年製作の映画)
3.9
非常に成熟した手腕と素人的な拙さが同居した不思議な味のある作品。例えば序盤で光貴(大友一生)が剛太(水橋研二)と遭遇する四ツ辻での場面、カメラの旋回の目覚ましい効果に対して光貴が見せる類型的である意味凡庸な演技。光貴と言えばその後で地下のバーに入り剛太に名前を告げるところのセリフ(台本)もありきたりで、ちょっと悪い意味でテレビドラマ的な箇所があるのが気になる。ぎこちないパンニングなんかもちょっと苦笑するしね。

反面、あの鉄橋の下(のみならず全体に殺伐としたロケーションとそのカメラによる切り取り方が素晴らしい)における乱闘シーンやバーの中での鏡やカウンター駆使した剛太、光貴、美里(瀧内公美)三者の関係性の表出、やはり剛太は光貴の実父だったか、思わせて実は…といった辺りのファーストショットの反復による抑制された、しかし観客にそれとなく気付かせる明確な演出なんかは良かったですよね。病室で光貴、剛太、美里と貴美(中村映里子)がタガが外れたように踊り狂うシーンも秀逸。お腹に子を宿した美里とその父、剛太の抱擁を背後から撮ったラストシーンでは屋内のベッドに唐突にデッサン人形が登場するが、言うまでもなくタイトル及び作品テーマの反映。デッサン=素描はようやく始まったばかり、「カゾク」が「家族」になるのはこれから、という予兆と希望のメタファーかな。

ともあれ監督の今井文寛の作品は今後も追いたいと思います。
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