「緑の山」
本作は1990年に名匠フレディ・M・ムーラー監督が、アルプスの山間で持ち上がった放射性廃棄物処理場の建設計画を取材したドキュメンタリーで、この度国内初ソフト化されボックスを購入して初鑑賞したが良作。アルプスの山間で持ち上がった放射線廃棄物処理の建設計画。土地と自分たちのルーツを守ろうとする反対派と賛成派に分かれた住民たちを追ったドキュメンタリーとしては素晴らしいものとなっている。内容は、1988年、NAGRA(ナーグラ、国立放射性廃棄物管理協同組合)はニトヴァルデン準州ヴェレンベルクに最終廃棄物処理場を建設する計画を発表し、地域住民の抗議団体が形成される。監督は支持者と反対は(特にヴェレンベルクに住むアルプスの農家)にインタビューする。
数世紀にわたりこの地で暮らしてきた家族たちは、核(放射能)の恐怖を目の前にし、原子力エネルギーそのものに疑問を投げかける。一方、賛成派は経済活動を理由に圧力をかけ、公共心を掲げて計画を推し進めようとする。さらに本作は、政治家、地質学者、医学者など様々な立場の人々の話から、一過的で限定された地域の問題にとどまらず、時間の尺度としては人間の寿命を遥かに超えたスケールの問題を提起する。監督はこの作品を子供たちと子供たちの子供たちに捧げており、次世代に対して責務を負うべき大人たちに問いを突きつける内容となった133分である。冒頭から子供たちのバスト・ショットが映し出され、音楽とともに複数のカット割で始まる。男の子、女の子様々な子供たちのカメラ目線でオープニングからこの問題の重要性を明らかにしている。