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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のfmkのレビュー・感想・評価

3.7
すごいものを見た、という感想です。

三島由紀夫=筋肉ムキムキの文豪、昔の人、過激な政治的思想の持ち主で自決した人…くらいの薄すぎる知識しかないままに鑑賞しました。

学生運動が盛んだった頃の東大全共闘が三島由紀夫を呼び、討論をおこなった場面を、解説が入りながら見ていく120分。
はっきり言って、討論の内容は難しくて2〜3割も理解できなかったのではないかと思います。
ただ、感じるものは沢山ありました。

三島も東大生も、強い信念を持って、言葉を使ってぶつけ合っていること。現代を生きる私たちにはこんなふうに、情熱を持って人に発信したい、押し通したいと思える信念や意思がないなと思いました。
社会を変えていくのは結局“言葉“だ、とか、会話こそ敬意を示しあうことと同義だ、とか、この作品(討論)が訴えかけるメッセージ性は、ネット社会やコロナ禍などで人と人とのフィジカルの会話が少なくなり、言葉を交わし合うことが重視されない現代を生きるからこそ、響くものがありました。

また、戦争を知らない世代の私からすると、三島の思想(右翼、反共産主義、天皇崇拝)に全く共感できなかったけれど、作品の中で分かりやすく説明されていて、なるほどと思ったので記録として書きます。

第二次世界大戦の時にティーンエイジャーだった世代(=三島)は、いつ戦争で死んでもいいという考えを持っていたため、国運=個人的な運命だった。
しかしそこで8/15の敗戦の日、国は負け、アメリカの属国となった時、自身の運命と国運が切り離されるとともに、身近な同世代の人間には死んだ者がいる一方で自分は生き残ってしまったことに苦しんでいた。
そういう者の中には、戦時中の国のために自身を犠牲にするといった使命感に一種の陶酔感を覚え、三島のような強い思想を持つことがあったようだ。

ーー私自身、あまりに平和ボケで、国のために戦い続けるウクライナを全く無関係といった感じで傍観してしまっているけれど、日本にもこういう時代があって、今の私たちももう一度この情熱から学べることはないのかなと思った次第でした。(もちろん戦争をもう一度、ということではなく、熱を持って何か考えを発信するということ)

三島が、20以上歳が離れた学生、青年達に向かって、一度も馬鹿にしたり軽視することなく、真摯に誠実に向き合っている姿に惚れるしかありませんでした。
所作がセクシーで、さすが俳優陣を押さえて当時の「ミスターダンディ」1位を飾っただけあるな・・と見惚れてしまいました。
自決に至った部分についてはほぼ触れられていませんので、別の作品で三島をもっと知っていこうと思います。
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