Matsuhero

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のMatsuheroのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

互いが互いの理想を胸に、討論を行うわけだが、三島由紀夫の圧倒的な懐の深さゆえに、全共闘の持っていた暴力的な雰囲気すらも、言と論を持って浄化し、真の論戦となる様が実に痛快。

明らかに全共闘は三島を挑発し、揶揄しようとしていた節もあったけど、それすらも真摯に誠実に意見をぶつけることで制してしまった三島。これにより全共闘側も本気で三島を論破しようと真摯に言霊をぶつけ始めた。

これが痛快に思えるのは互いが根底にある種の尊敬めいたもの、あるいはシンパシーを感じ取りはじめていたからだと思い、その両者を繋いでる感情の根源は、三島由紀夫も討論の締めで触れているように、「熱量」なんだと思う。

信じるものが違うゆえに絶対に交わることはない者たちが、真剣に互いに説得しようとする様は、今の事なかれ主義の、無機質な現代人で再現ができるだろうか。

勝利や敗北では語ることのできないものがこの駒場キャンパスにはあったと思うし、文字通りその場にいた人々の人生を変えたであろう伝説の討論だったのではないかと思いました。
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