セッセエリボー

夢のアンデスのセッセエリボーのレビュー・感想・評価

夢のアンデス(2019年製作の映画)
4.0
ピノチェトに売り飛ばされ新自由主義のエサと堕した現在のチリ。クーデタの勃発を暗示する濛々たる土煙は『チリの闘い』ファーストカットの大統領府爆撃と露骨に呼応していて一貫した作家だなと思う。本人も言ってたけど近作からは自然のなかで人間の営みが相対化される視点が加わっていて、「砂に(『光のノスタルジア』)・水に(『真珠のボタン』)・山や石に(『夢のアンデス』)記憶があったら、この国で起きたことを憶えているはずだ」というメッセージには歴史そのものを軽蔑するように全てを隠蔽・抹消したピノチェト独裁に対するグスマンの無念と怒りが感じられる。地図のような岩肌や窓ガラスの罅。『真珠のボタン』で見られた博物学的な視点が少なかったのは残念だけど、代わりに日本もまさしく同じ問題の渦中にある現在のチリが正面から捉えられた映画。