都麦

耳をすませばの都麦のレビュー・感想・評価

耳をすませば(2022年製作の映画)
1.3
【公害・天沢聖司パラダイス】
「嫌なやつ嫌なやつ!」だった天沢から「ヤバいやつヤバいやつ……(絶句)」な天沢へと変化した10年。

兎にも角にもやはり天沢聖司の賞味期限ギリギリを描いたのが原作『耳をすませば』だったのだと実感(つまりそれ以降の天沢はただの生きる犯罪である)。
原作のリスペクトの仕方は言うまでもなくカスなのだが、伝えたいこと的には(期待してなかった分)良いと思う部分も少しはあり…(それらは後半に記述)。しっかしとにかく天沢聖司に激萎え。

天沢聖司。まず10年もイタリアにいて部分部分英語交じりで会話しているのはなぜ…?楽団のなかには英語話者もいるとかそういう細かい演出なんだったらもっと違う部分に細かい演出すべきところがあったはずだよ演出陣。チグハグなんだよ…松坂桃李のPRか?10年越しに1人でイタリア来た雫への配慮もなさすぎてお手上げ。さすがにイタリア語のメニューみせて「好きなの頼んで良いよ」は無いだろ。さすが「やりたいならとことんやれ」と突然10年もイタリアに来させてくれる金持ちの子。元医者志望の聖司坊ちゃんは全体的に他人の気持ちがわからないのカナ……。「オレノイチバンスキナヒト…ッ」じゃねえんだ、10年も雫を放ったらかしてる自惚れが。
中学の頃“ボク、周りと違いますから”感を出すナルシストは100%拗らせてそのまま拗らせ大男になってしまうのでコイツは絶対浮気する(それもモテる方じゃなくて自分から周りを繋ぎ止める)パターンだと思ったけど、サラを通してその答えを教えないで欲しかった。こういうやつはマジで関わらない方が良い。
そして最後の手紙の冒頭「Dear雫」はヤメテ。「この前はせっかく来てくれてごめんね」じゃないんだよ、君にとっての航空券代と雫にとっての航空券代は違うのだが。ストーカー気質なのを綺麗な言葉で包んでるのもやばい、これブサイクがやってたら犯罪になるからね。あの再会のあとにあんだけダラダラ手紙書いて結局雫はお前を信じて待っていて良いのかの問いには答えずに「一番最初の読者」を名乗る天沢聖司はマジでやばい奴。
突然帰国してチャリで夜更けに家押しかけて「奇跡だ」もヤバい。そのまま突然思い立ったようなプロポーズも「愛してる」もヤバい。
一挙手一投足全てがマジでやばい。マジでヤバい奴。結婚したとしてもモハハラ勘違い夫まっしぐらだよ。悪いこと言わないからやめとけ雫。嫌なやつ嫌なやつ!からヤバいやつヤバいやつ…へと変化した10年。

月島雫。あの職場と家族の「有給使える会社なんていい会社よね」とはいつの時代?と思ったけれど、そうかこれは1999年か。にしても2022年公開の映画にわざわざ描くことかなコレ?そして土下座は寒すぎる。自分勝手にも程があるし、何より2022年に描くことか…?(2回目)1999年らしさがそれなの?だからこだわって演出する場所が的外れやねん。

そして杉村。仮にも一度雫に告白したことがある杉村が(しかもゆうこはお前が好きなんだぞ!と伝えられた後にそれを言った杉村が)ゆうこと雫のシェアハウスに普通に入り浸ってるのキモすぎてドン引き。流石に気を遣え。てか告白がなかったとしても少しは普通の一般女性である雫のプライベートを気にしてくれ。描かなくて良いことばっかり描いて、杉村を嫌いにさせないでほしい。こだわって演出する場所が違うねん。(5億回目)

良かったところ。
「本を読んでるとチェロが聴こえる」
正直そのセリフがオリジナルなのかは覚えていないのだけどそもそもこの話自体が原作をガン無視してるのでそこは割愛。とにかく今作、このセリフだけはスッと耳に入ってきた。チェロって人の声に一番近い音だから、人の声に耳を傾けようよと。そしてその“人の声”とは自分の声なのだよと。自分の声を聴ける、子ども心を忘れない大人であろうという点はまあ、伝えたかったことなのだろうなとは思う。

あとは子役が天才だった。山田裕貴の子ども時代が『FIRST LOVE 初恋』にも出てた荒木くんなのドンピシャすぎた(一瞬山田裕貴本人かと)。
あと雫の子役、この子やっぱりうますぎた。レビューをみてると下手だと勘違いしている人がいるけど、これは演出がヤバいのであって、ただしその演出をこんなに研究して演技に落とし込んでいるこの子役はすごいのだよ。

しかしまあ、ここまで書いてなんだけど、このラストはないわ。せめて、夢に挫折して、10年の恋を終わらせて、それでも明日に向き合う雫がみたかったよ。欲しかったのはこんな夢物語じゃないねん。まあそれ以前に天沢聖司のストーカーモラハラ勘違い童貞具合をどうにかした方が良いけど。
都麦

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