このレビューはネタバレを含みます
未体験ゾーンの映画たち2020にて。
なんの落ち度もなく性犯罪の被害者となってしまったマルテとリヴ夫妻。
2年後、徐々に傷ついた心も癒え、事件を忘れて幸せな日々を過ごし始めた2人。しかし、マルテは偶然、事件の主犯格の若者を見かけてしまう。そして芽生える復讐心がマルテを飲み込み、リヴは再び事件の苦しみに囚われていく。。。
加害者の無自覚さになんだか怒りを通り越して気分が悪くなりそうだったが、それ以上に作品の軸となる被害者夫婦の心の葛藤に引き込まれる。
塞ぎ込んだ時期や自分自身を責めた時期があったかも知れない。それを忘れたり、赦そうとする事で乗り越えてきた2人の前に、犯人が現れる。。。
復讐したいマルテと関わりたくないリヴ。
互いを思いやる事で抑えていた怒りや苦しみが噴出し、お互いの距離や関係もギクシャクしていく。
これまで支え合ってきたのに自分と相手の気持ちに差異が生じるなんて、想像を絶するもどかしさだろう。
丁寧に描かれる中盤の人物描写。
そこからの終盤へ向かうハラハラ感。
爽快ではないが、小さな希望を見出せるラスト。
アメリカ辺りならバイオレンな復讐劇になっていそうなテーマを非常に重厚な人間ドラマに仕上げている。
リヴ役の女優さんが特筆して素晴らしい。
