maco

さんかく窓の外側は夜のmacoのネタバレレビュー・内容・結末

さんかく窓の外側は夜(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

原作とは違ったけど、期待通りでよかった。原作は謎解きメインのエンタメだけど、映画の方は原作よりも心に焦点を当てたものになっていた。それでも、漫画のいいとこ取りして映画の尺に合うよう適当にまとめたのではなく、原作を愛し尊重した上で新たな解釈を加え再構成しているのがとても良い。何話もあるドラマやアニメなら、尺足りるんだから原作通りやれよ、と思ってしまうが、映画ならこういうのもありだと思う。私は漫画も映画もすごく好きです。
抽象的なモチーフばかりだから映像化は難しいのでは、と思ったけれど、無駄な説明セリフ抜きでよくここまで表現できたと思う。フィルムっぽいざらついた画面も、血や狂気のシーンでさえ圧倒的に美しかった。
志尊くんの中性的な美しさ、三角くんとは違うなって思ってたけど、ちゃんと三角くんの男前な感じが出てた。怖がる演技とかも、見てるこちらが怖くなるくらいリアルだった。
冷川さんは原作とは結構違って、こっちの方が人間味がある。原作の冷川さんなら、泣いてる志尊くんを抱きしめたりしないで、なんで泣いているのかわからず戸惑って無表情に見下ろすだけだと思う。契約書の下り(醤油で捺印するの、原作にはないけど面白かった)を除けば電波も抑え目。でも、この方が共感できるのかな?ただ、何考えているのかわからない感じや、絶妙なコミュニケーションの取れなさ、そしてふっと消えてしまいそうなうつろな儚さは完全に冷川さんだった。
お肉ばっかり食べてる理由がわかった時胸を突かれた。あと、三角くんに捨てられて(?)いじけてる場面が可愛かった。「私は苦しくて壊した。私があらかじめ壊されていたから」(映画では「僕」だけど)とか、そんな難しいセリフよく言えるなあと。前から思ってたけど、台詞回しがうまいよね、岡田君。
そして非浦英莉可は圧倒的に非浦英莉可でした。女優は2作目ってことで、豪華俳優陣と比べちゃうとやっぱりセリフなどの演技は拙いんだけれども、それを上回る表現力だった。踊ってた時も思ったけど、思いっきり体張ってるよね。全身で苦しみや孤独を表現していた。原作の英莉可は結構普通の女子高生で明るく可愛いので、そういうところもやってくれないかな、と思ったけど、それがなかったのはちょっと残念。まあ、映画のテイストには合わないか。
最後の食堂のシーン、よかったなあ。小道具の万華鏡も美しかった。
BLは控えめ、と監督が話していたが、私としてはこれで満足。BLを強調しないのが逆によかったと思う。岡田くんの触り方が十分官能的だったし。特に最後、朝日の中でゆるく触れ合った指先がひたすらに尊かった。
原作では、エリカちゃんは早めに救われて、最後冷川さんを救うのはだいぶ難しい。一方で、映画ではおそらく冷川さんは三角くんの愛で救われたけど、ラストシーンを見るにエリカちゃんの闇はまだ深そう。続きがあるのか?教団に関してもまだ謎が多いし。あるとしたら、原作とはだいぶ違う流れになりそうだけど。
maco

maco