このレビューはネタバレを含みます
論争的な話題作なので、観ておかなければならないと思って観た。
始終、音楽で爆発を思わせる重低音の振動が続いていたのが印象的だった。映画館で観ると迫力があった。
被害を描いていないという批判が多いようだが、オッペンハイマーの苦悩が中心となるテーマなので、このような描き方になって当然だろう。むしろ、間接的な描き方をすることで、被害の重さの印象を強めていたように思う。広島原爆投下の「成功」を祝う集会でオッペンハイマーが見た幻影は、特に印象に残った。閃光と爆風、女性の皮膚が焼け爛れていくような表現、そして彼が足で踏みつけた黒焦げの遺体。被害の状況を間接的にしか知ることができないことも空恐ろしかった。
アインシュタインとのやりとりが重要なテーマになっていた。大量殺戮兵器を作り出してしまったことを、この先人間がどう背負っていくのか。いや、人間が背負えるものを遥かに超えてしまっているのだ、という絶望で映画が締められていた。
ただ、それらは全て回想部分で、ストーリーラインの軸は、オッペンハイマーの政治的失墜を望むストローズが彼を追い詰めていく、小さな会議室でのやり取り。オッペンハイマーを罠にかけようとする人たちと、それを庇う人のやり取りは、正直あまり面白くなかった。
あと、登場人物が多すぎて最後まで名前と顔が一致しなかった人が少なくなかった。ただ、ニュートン、ボーア、トルーマン、ケネディなど、知っている歴史上の人物が何人も登場したのにはワクワクした。トルーマンが明らかにクソ野郎として描かれていてちょっと笑った。
