キャプまる

さんかく窓の外側は夜のキャプまるのレビュー・感想・評価

さんかく窓の外側は夜(2021年製作の映画)
2.5
2021年一発目の劇場での映画鑑賞。
何も心に残らない。なんのメッセージも感じられない。一体何がしたかったのか?何を伝えたかったのか?私にはわからなかった。

設定は面白くなりそうなものが複数あるのに起承転結のないストーリーや見せ方、音楽などで壊滅的に面白くなくなってしまってる作品。

「結局人が一番怖い」「当たり前だろそんなこと。」のやりとりを序盤あたりに出してきたので、よくある普遍的な結論では終わらせないぞという気概を一瞬だけ感じたが、結局何が言いたかったのかわからないストーリーになっていた。

ここらへんからネタバレ要素があるので気にされる方は読まないほうがいいかも。



すべての要素が中途半端でろくに回収しないまま終わってしまう。
三角はともかく他の主役のヒウラエリカと冷川はストーリー構成の影響でろくに掘り下げられていないし、冷川の異常性がわかるシーンもインパクトに乏しすぎるのでよくわからないキャラで魅力を感じられなくなってしまっている。
ヒウラエリカは”事件とどう関わっているか”の興味でストーリーを引っ張るので終盤まで謎を保つのは効果的だが、冷川も謎を引っ張ると主役3人中2人も終盤までキャラが掴めないままで、最後らへんに二人の過去とキャラクター性を一気に明かされても今更感が強くて感情移入もクソもない。さらに終盤に詰め込みすぎてよくわからないうちに過去を克服したみたいになっていて、主役3人に納得のいく成長がほとんど見受けられないのも痛い。

”呪い”、”霊”というオカルトな要素がありながら異能を持ちそれゆえ暗い過去を持つ3人の人間ドラマにフォーカスを当ててる割りに、キャラの掘り下げが甘いので何がしたいのかわからない。非凡な才能を持つ人の葛藤や、仲間を見つけ過去を克服する様を描きたかったならもっと丁寧に人間関係やキャラクター性を描いて欲しかった。バックハグからの目のドアップのカットインを毎回入れる余裕があるならもっと他に出来たことがあると思う。

エリカのお付きみたいなポジションの人間はなんだったのか?最後どうなったのか?それより重要なポジションにいる宗教団体とその教祖もどうなったのか?ここらへんを描かないのは続編のためかもしれないが、それにしても匂わせすらなかったのはいかがなものか。もう詰め込みすぎて制作側全員が忘れてしまっていたのではと疑ってしまうほど。

信じるものに作用し信じないものには作用しないという設定はよく、だからこそ「信じない者」である刑事には呪いが効かないというのもワクワクするのに、あの展開でまだ信じないというのは流石に無理がある気がする。
そこで信じてしまうというありきたりな展開をしたくないのだろうが、それならそれで「信じない」という特性をもっと活かして欲しかった。呪いに対して強い「信じない」特性の人をなぜ呪いと関係ないとこで時間稼ぎさせるのか?展開上仕方ないにしてももっと自然な言い訳はなかったのか。

少しネタバレになってしまうがヒウラエリカの行動にしても謎で、気づいてほしかったらなぜあの場面で呪ったのか?別に呪わなければ自分がやられるとかいう危機的な場面でもなかったのにいくら考えても謎である。
それにあの貯金箱の部屋の安っぽすぎるトゲトゲの呪いの表現はなんなのか?何を思ってあれにしたのか?あの平手友梨奈のトゲトゲ束縛の姿はギャグでやっているのか?
結局なんのお咎めもないというのも納得いかない。呪いで連続殺人を引き起こした原因の一つでもあるのにあまりにも都合が良すぎる。だからこそのラストシーンなのかもしれないが、あれが呪い返しなのか何なのか具体的にはわからないので釣り合いが取れてないと思ってしまう。

あとどうでも良いかもしれないが三角の結界はなんの意味があったのか?最後の貯金箱の部屋でも使わないし、なんなら最初に貯金箱前で使ったときも効果があったのか謎という演出。主人公らの関係が三角関係になるかと思えばそんなになっていないし..という中途半端さ。

良かったのは冒頭の冷川が某呪術バトル漫画の五○悟のような丸いサングラスをかけて佇んでいる姿のかっこよさと、過去の宗教団体の信徒同士が殺し合ってるシーンとオープニングが伏線になってるところの3点。
それと肉を食べているシーンは、ただ単に趣味の悪い演出かと思ったら伏線になっているところは一本取られた感じがした。だからと言って評価が上がるはずもないが。
TVCMであったシンクロナイズ「あそこです」はコンビの絆とかが生まれた後のバディ力(ちから)感じられるアツイシーンになるのかなと思っていたがそんなことはなかった。

ネタにできるほど明らかにおかしいと感じるつっこみどころや不快感ポイントがなく、ちょっとのツッコミポイントがあって終始盛り上がりきらずに終わるという毒にも薬にもならないただの不味い水といった感じの映画。
「これがやりたいんだ」という明確なシーンもテーマもないので本当に何のためにこれを作ったのか?利益のためならもっと振り切って平手友梨奈を出しまくったら良いのにとすら思ってしまう。


連続殺人事件の隠された呪いの装置を見つけるシーンまでは「今まで自分が見てきたものを否定するんですか?」や「人なんでどこでも死んでますよ」などのセリフも良かったのに、そこからバディものとしてはキャラがよくわからないのでうまく成立せず終盤にかけては何がしたいのかわからないストーリーになる。

しかし、思わず途中で見るのをやめたくなったり耐えがたいほど幼稚で見てる側が恥ずかしくなるような映像表現が多々あるというわけではなく、面白くなりそうでならないを延々と続けているだけなので初見なら一人でも最後までの鑑賞に耐えうる。
一言で表すなら「微妙」な作品。
キャプまる

キャプまる