ユキ

パピチャ 未来へのランウェイのユキのレビュー・感想・評価

3.8
90年代、内戦下のアルジェリアで、徐々に人々、特に女性が息苦しく弾圧される空気が高まっていく。明るい展望も萎んでいく様子というか予感が、冒頭の流れでよく表されている。

主人公ネジュマはファッションデザイナーになりたいという夢がある大学生で、品行方正というわけでもないけど、ちゃんと自分で考えて手も動かす、地に足のついた人物造形だなと感じる。そんな主人公が頑張って服を作って、ファッションショーを開催!というベタな青春物語も命懸けとなってしまうのが辛い。

いってしまえば、自分の生まれた国で好きな服を着て、自分の選択した職業に就くために頑張って暮らしたい。これ、それほど困難なことだろうか?と思うのだけれど、それらの思いは次々に捻じ伏せられていく。

寮の扉、国境、女性がゲートを通過しようとすると、いつもそこに男性が立ちはだかる。いや、移動だけでなく、自分の生まれた国に居続けようとするだけでも、男性が必要となってくる。なんと恐ろしいことであろうか。
と思っていたけれど、この作品では、女性が女性の生き方を弾圧するような行動をしていることも描かれていて、結局のところ暴力、権力を笠に着てしまう隣人たちが恐ろしい。

劇中起こる出来事に、どんな顔をすればいいのかわからなくなってしまった主人公がそれを洗い流し、自分の生まれた土地から生まれたもので染め直す。この一連のシーンに、彼女としての闘い方を見たように思う。
ユキ

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