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マリグナント 狂暴な悪夢のRのネタバレレビュー・内容・結末

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人2人と。

2021年のアメリカの作品。

監督は「ワイルド・スピード SKY MISSION」のジェームズ・ワン。

あらすじ

ある日を境に悪夢体験に苛まれ始めるマディソン(アナベル・ウォーリス「コンティニュー」)。しかし、夢の中で超人的な動きで人々を殺していく殺人鬼の諸行の数々は現実世界でも実際に起きてしまい、やがてその邪悪な魔の手はマディソンにまで届き始める。

引き続きよく見ている映画系YouTubeの「シネマンション」出演の芸人「ジャガモンド」の斉藤さんが高橋ヨシキ氏との配信で絶賛していて、気になったので、友人2人を誘って鑑賞。

ただ、その前に僕自身ホラーが大の苦手でして💦特にJホラーとかわぁっ!とか急に大きな音出してくるタイプだとノミの心臓なので手で隠さないと見れないくらいダメなタイプ…ということで、まずまともに観れるのかという一抹の不安を抱きながら、恐る恐る鑑賞したのですが…。

確かに途中までめちゃくちゃ怖かった…。ただ後半から…なんじゃこりゃ!?という感じで新感覚で非常に楽しめました!!

まず、レビューを書く前に本作、あらかじめ事前情報を入れずに観た方が絶対面白いタイプの作品なので、まだ観ていない方は例のごとくネタバレ全開大王でいくのでご了承ください。

ということで、本編。冒頭、なにやら精神病院内での「ある患者」による大混乱を描くんだけど、何やらその精神病院の院長らしきウィーバー博士(ジャクリーン・マッケンジー「オキュペーション-侵略-」)がその「ある患者」に関する口述を荒めの画質のカメラテープに向かって喋るところから始まったり、そこからの患者制圧シーンの急展開など、冒頭からジャンル映画節全開。

で、そこからオープニングロールが始まるんだけど、ここはなんというかホラーのオープニングというよりかは最近でいうとレジェンダリー版ゴジラシリーズなどの作品内の記述レポートをバックに送るオープニング映像っぽい感じ(もしかしてゴジラオープニングのカイル・クーパーの「プロローグ・スタジオ」が携わってる?)。

そんな感じで今作イマドキのバリバリホラーというよりかはどちらかというと古き良き時代の「怪奇映画」の味が色濃く出ている作りとなっている。例えば、主人公マディソンの暮らす屋敷がいかにも〜な古めかしい作りだったり、その屋敷で何かが起こる前触れで電光がチカチカと点滅したり、バックで本当にいかにも〜な雷がなったり、バックで流れるBGMもやたらとおどろおどろしい音楽が奏でられたり、他にも80年代なバックミュージックやホラーに似つかわしくないサイバー感溢れる音楽まで…。多分「あえて」寂れた映画館で上映しているようなチープなジャンル映画感を醸し出している。

で、その最たるシーンとして冒頭と終盤に登場する冒頭の精神病院の場所が海沿いの崖っぷちにあるからね!

で、ここでちょっと邪推すると、あれだけ「もうホラーはやらない」と言っていたワンがホラーに帰ってきたのは、「ソウ」シリーズで脚本としてタッグを組んだ盟友リー・ワネルによる2020年の作品「透明人間」のスマッシュヒットがあったと思うんだよなぁ。で、あちらも作品内の重要な拠点となる主人公が暮らしていた家が海岸沿いのガラス張りの家…。しかも演出は古典的な怪奇演出…。うーん、これは「透明人間」を明らかに意識して出来た作品と言っても良いのではないだろうか笑

で、そんな感じで始まる本作、序盤からまさに主人公の家にホームインベーションしてくる殺人鬼なんだけど、その姿はレザーのコートを羽織り、黒革の手袋を着用して、ザンバラ髪で顔面を覆い尽くした全身真っ黒コーデでまるでアサシンの如く登場してくるからこ、怖いっ!!はじめ主人公マディソンのDV夫が首グキッとやられて殺されちゃうんだけど、暗闇の中死体の陰からヌメェと登場するところなんて、まるで貞子だったからね😱

動き方もなんかカクカクしてて明らかに常人ならざる動きで気持ち悪いところもJホラーチック。

他にも、ここは典型的なホラー演出が目立って、例えば暗闇が点滅したかと思えば、ソファにいきなり殺人鬼が座っていたり、勝手に家電がついたり(どうやらこの殺人鬼電気を自在に操れる)、ドアが開いててそこから風がビューと吹いたり…否が応でも恐怖心を掻き立てられる。

で、そんな彼氏の死をきっかけにマディソンの悪夢体験が現実世界とリンクして、冒頭の精神病院の関係者が次々と殺されていく。

ここら辺で、この殺人鬼が「ガブリエル」という名称で、その顔貌は見るもグロい化け物だということがわかりはじめてくるんだけど、このガブリエル、めちゃくちゃ機敏ですばしっこい。中盤刑事のショウ(ジョージ・ヤング)と壮絶な追いかけっこを展開するんだけど、まるでジャッキーのような階段降りを披露したかと思えば、そこからパルクール仕込みのアクロバティックな動きでチェイスを盛り上げていく…ってあれあれ?これホラーだよね?

このショウ刑事も主人公の妹で女優志望のシドニーちゃん(マディー・ハッソン「サモン・ザ・ダークネス」)に色目なんか使っちゃったりして、ナンパな面もあるんだけど、なかなか渋といというか骨太な男でガブリエルをしつこく追従しながら、格闘シーンでもなかなか健闘してくれたりなんかしちゃったりして、段々とガブリエルの恐怖心も違うものに変わっていくのを感じ始めた頃、精神病院関係者がターゲットとなっていたのに、何やら全く関係のないおばさんがガブリエルに捕らえられ、住処ではガブリエルが凶器をカンカン…。ようやくおばさんが逃げ出そうと思って、床板をぶち抜いて落ちた先はまさかのマディソンの屋根裏部屋でした…ってえぇ??

なんというか、観客を次々に煙に巻く展開で、ホラーだかなんだかわからない演出が徐々に増え始め、あれ?これもしかしてマディソン=ガブリエルじゃね?となった警察はマディソンを収監…これにて事件は収束か…と思いきや、遂に明らかになるガブリエルの正体。

なんと、ガブリエルは幼少精神病院の手術によって切除(封印)されたはずの「寄生性双生児」だったのです!!

その登場はシドニーが精神病院で奪取したビデオテープの映像によって明らかになるんどけど、うら若きマディソンの後頭部から背中にかけてまるでエイリアンの様に蠢くガブリエル…キタキターー!!

そして、一方のマディソンは一緒に収監されていた見るからに屈強そうな女たちに餌だと言わんばかりにフルボッコ…と思いきや次の瞬間白目を剥いて痙攣し始めたと思ったら後頭部からガブリエルが現れ、体格もトランスフォームーー!!

いや、これモンスターパニック!?そっからはマディソン白目剥いた状態でムーンウォークしたかと思ったら(ここのシーン爆笑!!)、次々に女どもをスプラッター全開で皆殺し!!

ギア全開のマディソン/ガブリエルはそのまま檻の鍵を奪取して、警察に突入!!数多くの警官相手にまるでジョン・ウィックかアサシンクリードの如くの大立ち回りっ!!いや、これ何のアクション映画だよっ!!

もうそっからは完全にホラーを逸脱したジャンルレスムービーのカオス状態となっており、なるほどジェームズ・ワンどうせホラー畑に帰って来るなら今までやったことのない、観たことのないもの作ろうと思ってこういう展開にしたんだな!うん、いややり過ぎだろ笑!!

という感じで終盤はなんだかよくわからないものとなってしまったのですが、個人的には大いに怖がり、そして笑わせてもらいまして、大満足です!!ガブリエルという新たなホラーアイコンも愛らしく、ラストはマディソンがガブリエルに打ち勝ってめでたしめでたし…ながらホラー映画のラストらしく「続編」も匂わせているんだけど、ここは潔くマスターピースな一作で終わらせても全然OKではないだろうか?

個人的には上品な怪奇趣味な「透明人間」も好きだったけど、この「凶暴」なまでに愛らしいガブリエルを生み出したというだけで流石のワンに軍配が上がった。個人的にお気に入りな一作となりました。Blu-ray出たら買おうかなぁ…。
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