たく

ミナリのたくのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.7
農場経営の夢を叶えるためアメリカに移住した韓国人家族の話で、すごく地味な作風なんだけど、「ミナリ」が彼らの象徴のように登場するところにジーンと来た。レーガン政権下の1980年代アメリカが舞台なんだね。

彼らが新しい地にやって来る冒頭から広大な土地が目に焼き付いて、ゼロから土を耕して行く様子がアメリカ開拓期にそのまま重なる。夫婦喧嘩ばかりでハラハラするんだけど、祖母の登場後の孫とのギャグ的演出にほのぼのした。この孫のデビッドが作中で一番名前を呼ばれるキャラクターで、彼の目線が中心になってるように思えた。三世代の家族の姿を通して、異国の地に根を張って行く移民の逞しさをミナリに象徴させてたのがジーンと来る。

奇妙な行動が危なっかしいポールがすごくいい人たったね。終盤の出来事はまるで神が彼らに与えた試練のように思えて、ポールが狂信的なキリスト教信者であることや、主役の名前がジェイコブ(ヤコブ)であることと無関係ではないと思った。

ゴールデングローブ賞に続きアカデミー賞にもノミネートされてる本作、正直そこまでかなー?とは思った。主演のスティーブン・ユァンは「バーニング」の不穏な役と打って変わって夢と現実のギャップに苦しむ男を素朴に演じてた。祖母役のユン・ヨジョンは終盤の展開も含めて「藁にもすがる獣たち」と似たような役で驚いたね。
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