Ryo

ミナリのRyoのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.1
聖書を知る事で違うストーリーに見えてくる


■タイトル「ミナリ」の意味
ミナリとは野菜のセリの事でたくましく地に根を張り、2度目の旬が美味しい事から子供世代のために親たちが懸命に生きる姿を象徴している。


監督はこの田舎町で育った後映画監督になる為イェール大学にいくが中々上手くいかず一度このアメリカの育った街に帰ってきたそう。その時育った町も農業の跡も何もなかったがセリだけは育ってたそうだ。別の土地に根付いた韓国系移民、おばあちゃんのたくましさの象徴でもある。

■様々なメタファー
冒頭の引っ越すシーンでは父はトラックを運転しどこに行くかもわからないトラックの後ろを母と子供達がついていく構造になっている。この映画全体のテーマでもある。
更に主人公の運転するトラックにはキャザートラックという会社名が書かれている。これは架空の会社で「マイアントニーア」作家のウィラキャザーをオマージュする形で出している。マイアントニーアは監督の幼少期の生活と似ており今作を作るに至ったという。
ひよこ選別のオスメス分け、オスは役立たずで捨てられてしまうというのはジェイコブのような家父長制度に縛られた男を表している。


■聖書の引用
主人公の名前ジェイコブは英語表記でヤコブ(旧約聖書イスラエル民の流浪の歴史に出てくる最初のイスラエル人で父親)である。
冒頭では妻はジェイコブに約束と違うじゃないというセリフはヤコブが求めていた約束の土地を意味しそれを求めてアメリカに渡った。
土地を見てエデンの園だと言ったジェイコブは人間の父であるアダムを意味している。その後エデンの園に出てきたように蛇が登場する
台風で洪水の中にあるトレーラーハウスはノアの方舟であり、ノアもまた父親であり家族に反対されながらも自分の信じた道を進む。
しかしジェイコブは神や迷信などを一切信じていない。
そしてポールは朝鮮戦争でPTSDになり神に救いを求めているのだろう。朝鮮戦争によってあのおばあちゃん以外はイ夫婦の父母は死んでしまったという背景もある。

太陽=神を表している為太陽が出て来るシーンに注目するとその後奇跡が起こっていることに気がつく。

映画ラストではダウジングで水脈を見つけると石を置きます。それを監督は「祭壇です」と答えている。ヤコブは神からこれからあなたたち一族はイスラエルと名乗りなさい。あなたたちを守る。と聖書の中で言われる。そして聖書ではそこに祭壇を立て後にキリストが訪れるヤコブの井戸となったところであり、希望的なラストを示唆させる。

■ポールの正体
ポールはみんなに馬鹿にされながらも神を信じ、悪魔祓いなどで家族を救済します。彼は新約聖書を書いたパウロのメタファーなのです。

■祖母の正体
あのおばあちゃんはデビットに独自に作った薬を飲ませる。これはキリスト教でも昔禁止されていながらも民間療法として老婆が作っており魔女と呼ばれるようになったと。なぜ脳震盪で動かなくなりおねしょもしてしまったのか?それはデビッドの病をすべて吸い取ったともみれる。

祖母は病を治し、セリという食べ物を与え、家族を再生させる。
祖母の偉大さを感じ取られる。


町山智浩ムダ話参照
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