dendoh

MINAMATAーミナマターのdendohのネタバレレビュー・内容・結末

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

最近は蔑ろにされがちな市民運動と報道の力を改めて実感(しかし多くの描写が創作である事は留意)

少数派意見を『p.p.m.』呼ばわりするのは、高速鉄道事業における佐賀県や静岡県を思い起こさせられた。公害を含めた健康被害の認定をしたがらないのも、コロナ拡大やワクチン薬害の責任を誰も取らない現代に通ずる所がある。

放映当時にポスターを観て、ユージン・スミス役を勝手にジャン・レノだと思ってたのだが、実際はジョニー・デップだった。存命のアイリーン本人が『似てる』と言うぐらいには、ジョニデの演技はハマっている。彼の憑依型演技には感心するしかない。

史実との差異は少し調べれば色々出てくる。あくまでも『部分的に史実に沿った』ドラマである。例えばチッソによるユージンへの贈賄や放火による工作は完全にフィクションで、アメリカ的価値観から物語を単純化するために悪人に仕立て上げられている面は否めない。
また、作中ではチッソが水俣のローカル企業のような描き方をされている。これはロケの都合だと思う。結果的に水俣市内で話が完結してる印象だが、実際にユージンが暴行を受けたのは千葉県の五井工場だし、株主総会は大阪で開かれている。
このあたりの脚色等もあり、地元では必ずしも受け入れられていない模様。それでも公害記憶が薄れた現代において、ジョニー・デップという一流俳優を使った作品が公開される事の社会的意義はあるようにと思う。

悲惨な内容だが、ユージンが憎めないキャラクター(子供に負い目を感じているアル中の中年である)としてコメディリリーフの役割を担っているので、暗くなりすぎずに済んでいるという印象。

日本の俳優陣は、日本人が登場する海外映画でよく見る人達(真田広之、國村隼、浅野忠信など)。彼らやジョニデの英語セリフだけでなく、聞き取りにくい九州南部方言にも字幕を入れてほしかったなぁ。
dendoh

dendoh