TaiRa

あの頃。のTaiRaのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
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アイドルやオタクというものを中心に置き過ぎない選択は、今作に関しては良かったと思う。そういうのをガッツリ描いたのも観たいけど。

近過去を扱う青春映画なので、下手するとノスタルジーどっぷりな内容になっちゃうけど、その辺は上手くバランス取ってた。冨永昌敬の持つ重さを今泉力哉の軽さが良い具合に中和していた印象。しょうもない男たちの青春を程よくドライに、そして中立的に見つめる。とにかく登場人物をジャッジしない。輝きと醜さを平等に描く。オタクとは、とかアイドルとは、みたいなとこへは踏み込まず、ただそういう生き物として画面に登場する。それでも、人がアイドルに人生を救われるという事象は描いているし、松浦亜弥の神性は説得力を持って映し出される。映画も中盤を過ぎるとアイドルに熱中するだけの人生から、各々の人生に訪れる転機を描き始める。そのスライドもそつなくこなす。人間の美醜を客観的に描いて来たことが、この終盤の展開に生きてくる。下手な監督がやればクドい場面ばかりだったと思う。最低な男の一生に対し、それ相応の悲哀を感じられるバランスが良かった。一方、笑いに関しては乗れない部分も多かった。内輪ノリを客観的に描く上での難しさを感じる。やっぱ映画は笑いが一番難しい。
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