津軽系こけし

あの頃。の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
4.8
楽しくて何も見えねえ


推しと仲間は推せるときに推せ
まずい。「愛がなんだ」で人生観をそっと撫でられ、今作で前代未聞の号泣をさせられたことで、私はもはや今泉力哉作品から逃れられない体にされてしまった。

しがないバンドマンのつるぎ君が、ハロプロアイドルのDVDをきっかけに”推し”と出会うことで、妙ちくりんなオタク仲間たちと出会って、青春さながらの友情を謳歌するシナリオ。

「愛がなんだ」に比べると人間の感情がそれぞれ明快で、友情劇ということも手伝って見やすい印象。
しかしながら、アイドルオタクの話という看板が、推し文化に明るくない人にとってとっつきずらいというフィルマークス内の意見も理解できる。実際、主人公のつるぎ君がその”推し”との出会いを果たす肝心なシーンは、精神性に寄った描写になっているため分かりづらいといえば分かりづらいのかも。

ま、私はそんなことなく、存分に堪能できたけどな!!!

私が筋金入りのvtuberオタクということも手伝ってか、ほぼ彼らに通ずる推し文化圏の視点からこの青春を覗くに叶った。
1つのコンテンツにおけるファン間の交流という妙味を、今作は本当の青春・卒業みた雰囲気で飾っている。
さらに「愛がなんだ」でも取り上げられていた(年齢)というテーマとも照らし合わせになっていて、今泉風味が良く生きている。原作が未読なので映画との空気間にどれほどの差異があるのか判然としないが、この監督がメガホンを取ったことで最適の映画化が成されたと思う。

この余韻はあれだね、園子温監督の「地獄でなぜ悪い」を見終わった後の余韻に近い。にしても目が痛いな…。この映画が上映できるのも、昨今の推し文化の拡大が手伝っていると言えるのかもしれない。
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