《料理の映画》、Vol.11。
料理が家族と、世代と、言語と、宗教を跨ぎ、繋ぐ。
割とポップなタッチだが、意外とタフなテーマを描いている。
イスラエル人の母とパレスチナ人の父の子、というルーツや背景、経緯、文化や宗教的に相容れない部分を持つ2人から生まれた子供、エイブ。
その混ざることはない文化と宗教的な背景をベースに色濃く描く一方で、斬新で自由な料理を振る舞う人物が登場することで文化宗教的な隔たりを料理で迫っていく物語。
いわゆる陰キャ系のエイブ。
だけども飽くなき料理への情熱だけは止められず。
親や親戚はその複雑な背景により、ぶつかってばかり。親同士、親戚同士で喧嘩やら。それぞれ個別にそれぞれの宗教に基づくイベント。
その狭間で複雑なエイブ。母親のイベントに行けば父方に何か言われ、その逆も然り。どちらかに傾けばどちらかに嫌味を言われたり。
常に自分のアイデンティティに悩むエイブ。
悩めば悩むほど自分には障害が多いことに気付き、挫折や苦悩を味わう彼が、逃げた先にいた自由な料理人たち。
最初は現実逃避のような形で彼らと関係を築いていたが、それがやがて自分のアイデンティティと向き合い乗り越えるヒントとなっていく。
どんな環境、生い立ちであれ、自分の居どころは自分で探し、乗り越えていかねばならないという強く前向きでタフなスピリットを感じる。
だけど、それをゴリゴリシビアに描かずにややポップに演出し、エイブの成長にフォーカスしながらエイブのキャラクターに等身大のティーンらしさがある。
親の都合や背景に戸惑いながら、長い歴史の中でできあがった文化や宗教という“自分がどうこうしてどうにかなることでもない”ことにどう立ち向かうか、立ち向かわないか、の彼なりの冒険と葛藤。
1人でどうにかなることでもないけれど、とは言えその隔たりや摩擦は確実にある。
そこに逃げたり立ち向かったりしながら1つの答えを見出す陰キャの料理好き少年のとある成長の一幕。
良い切り口と絶妙なタッチの映画。
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別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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