カラン

トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングのカランのレビュー・感想・評価

4.0
オーストラリアの義賊の話。義賊というのは、違法行為を生業にするが、弱い立場の人たちを守ることをやったり言ったりする人。ロビン・フッドとか、日本だとルパン3世みたいな。本作では、ネッド・ケリーという1850年くらいに生まれて、銀行を襲って、森に潜んでは、警察を多数殺したが、金を配ったりとオーストラリアでは英雄的な扱いらしい。




さほどに悪くはない。が、当方はネッド・ケリーって誰?なので、物語が予想だにしない展開をする主な理由が気分屋な人物たちの思いつきのためであるというストーリーに、運命の重みや必然性が感じられず。カメラもかなり自由であるが、森の木々をでかいクレーンで撮ったようなショットと、そうした木々がゆらゆらかしいだときの低音がなるのだけが一貫している。

そういうわけで、女装で馬に乗って疾駆するショットも、実話なのか脚色なのか分からないが、なんか、ジェンダーフリーとかトランスジェンダーとかの今どき感狙いのキャッチーなタグ付けのように思えてくる。ネッドと男友達を接近させて横たえさせるのも、なおさらに、話題作りの下世話な脚色に感じられてしまうのだ。

しかし、観てよかったと思う。本作のただ一つの救いは、森での闇夜の銃撃戦だ。ネッドは鉄の鎧をまとって包囲した警察に向かって発砲する。が、少なくとも180度は包囲されて、ライフルで射撃される。夜闇の中で、フラッシュの閃光がばんばん。で、発砲音も着弾の音も無数にあり、弾丸の嵐でホワイトアウトすることになる。気持ちいいよね〜。

ということで、暗室&大画面&爆音で視聴できる環境ならば、眩暈がするほど楽しいだろう。主人公は鎧の狭い覗き穴で見ているので、闇の銃撃戦で弾丸を食らうように、鑑賞者の体感を誘導している。撃ちまく《られる》銃撃戦をがっつり体験できるのは、素晴らしい。そのホワイトアウトは一つの死だ。

DVDで視聴。
カラン

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