なみ

モロッコ、彼女たちの朝のなみのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
3.5
モロッコにはずーっと憧れがあって、いつか訪れてみたいと思う国のひとつ。

ただ、根強い性差別やその慣習が残っていることは、彼の国の影の部分なのかもしれない。

本作は、未婚の母と未亡人との交流が描かれている。
男性は不在。その意味とは。

未婚の母が生きにくいのは日本も同じであるけれども、職業や住む場所といった生きていく糧を奪われるのは非常に過酷。

そこに手を差し伸べた未亡人も、性差別的慣習により、亡くした夫にまつわる苦しみや悲しみが消えず、心は凍ったまま。

未婚の母に対しても頑なさがあったが、共に生活を重ね、お互いの苦しみを分かち合ううちに、心が変わっていく。

未婚の母が未亡人に教えるかのように、2人が一緒にパンを捏ねるシーンは美しい。
年齢の上下が逆になったかに思える、年若い未婚の母の方が母親だったり姉のような面影を見た。
未亡人の頑なさを、未婚の母が解きほぐしていく様。

未婚の母が産んだ子どもに対して、また未亡人が自分に対して向き合うシーンもまた、息遣いが聞こえてくるほど繊細で、その表情が美しい。

生と再生を描いた今作。
監督の優しいまなざしを感じた。

未亡人の子どもがとても愛嬌があって、可愛らしく、今作の唯一の明るさであり救い。

未亡人の生活の糧であるパンや日々の食事、音楽、そして伝統的な祭りなど、モロッコの文化や生活が垣間見れたのも楽しかった。

今作の邦題は、好きだなぁ。
"ルジザ"、食べてみたい。
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