あい

モロッコ、彼女たちの朝のあいのネタバレレビュー・内容・結末

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

非常に社会性の強い映画でした。
モロッコでは、婚約前に行為を持つことは犯罪になるそうです。

そんな行為をしてしまい、身ごもったサミア。サミアはメディナの路上で生活していました。そんな時、女手ひとつでパン屋を営むアブラが自宅に迎え入れます。

初めこそぎくしゃくしていた2人でしたが、アブラの娘ワルダの存在もあり心を繋げていき、サミアの存在に親子の関係にも良い変化が。

サミアは産まれてくる子のために、養子に出すことを決意していました。そんな中、ついに陣痛が訪れ無事生まれたもののサミアは母としての気持ちや生活に挟まれ、どちらになっても苦渋の決断を下すことになるのでした。

ラストシーンではサミアはアブラ親子の元を去るシーンで終わっています。


観終えたとき、バッドエンド!?ハッピーエンドが良かったなと単純に感じていました。
その後、モロッコでバイヤーをされいる方に聞いたところ養子に出したと思う、との回答でした。
レビューでは育てることにしたと、前向きなものも拝見しました。

ただ、私にはこのモロッコのバイヤーさんの話がとてもしっくりきました。
映画の中でアブラの夫についての言及もありますが、モロッコの女性は夫が死んでも棺に立ち会えず、未婚のままで子どもを育てることも出来ず、人権がないなかでその現実を許容し、いまこの瞬間も生きている。それはドラマティックなものでもなく、モロッコの人にとってはただそこにある日常である。
その苦しい現実をモロッコを起点として強く訴えているのだと。
だからラストはハッピーエンドであってほしくてもハッピーエンドなわけが無い、なぜなら現実がそうではないから。

言葉少なく絵画のような映画で、心の深いところに落ちたような気がします。
モロッコが大好きで見ましたが、美しいモロッコばかりではなくモロッコの社会にももっと目を向けようと思いました。
あい

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