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モロッコ、彼女たちの朝のinuのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
4.1
止むを得ず未婚のまま身ごもったサミア。婚外交渉がタブー視されるモロッコで未婚の妊婦に対し厳しい眼差しを送りつつも路頭に迷うサミアを招き入れたアブラ。二人の女性の交流を通し、モロッコ社会における女性のあり方に一石を投じる作品。サミアとアブラの心の交流と心境の変化の自然さに引き込まれたが、観賞後に調べると監督自身の原体験に沿って制作されたという。センシティブな問題に踏み込む難しい題材を扱う一方で、フェルメールの絵画のような作画、二人の女性の寡黙さ、そしてアラブ音楽に合わせて踊る姿など印象的で美しい映画だった。未婚の妊婦に社会的に烙印を押すのはイスラーム圏だからという話では全くない。舞台が日本であっても成り立つほど普遍的な問題であると感じる。この作品はモロッコ社会のみならず、世界中の多くの人に響くものであるはずだ。
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