未婚の妊婦サミアと夫に先立たれシングルマザーでパン屋を営むアブラ、2人の女性が出会い、打ち解け、互いに心の棘を癒やしていく様子を描く実話ベースの物語。
モロッコの女性の立場や厳しい現実を女性監督ならではの繊細な映像と奥深い情感で見せる。
モロッコのパンや菓子づくり、エキゾチックな音楽、フェルメールの絵画のような構図、言葉は少ないながらも丁寧に作り込んだ世界がこちらに語りかけ、すっと沁みていく。
未婚の母は許されないお国柄のため生まれた子供は養子に出さねばならない。どうせ養子に出すのだからと名前も付けず、子供と触れ合おうともしなかったサミアが、次第に子供に愛情を抱き始める姿が感動的でした。
主演2人がとてもいい。アブラ役は『灼熱の魂』『英雄の証明』のルブナ・アザバルで抑えた演技が素晴らしい。