リョーシ

ポゼッサーのリョーシのネタバレレビュー・内容・結末

ポゼッサー(2020年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

これは圧倒的傑作。一生ついて回るであろう「鬼才デヴィッド・クローネンバーグの息子」というレッテルすらも弾き飛ばし得るレベルの暴力、狂気、そして変態。もちろん父の作品である"ビデオドローム"や"イグジステンズ"なんかの要素も感じられるけど、ただの模倣じゃない。他者の意識を「所有」することで暗殺を遂行する女性の苦悩、鮮血飛び散る執拗なまでの暴力とゴア(美しさすら感じる)、宿主との意識の所有権をめぐるせめぎ合いでのストロボ映像を使った幻覚。全ての要素が観る者に不穏な何かを感じさせるSFスリラーの新たな金字塔。

スクリーンに映し出された殺人現場を見る主人公の赤く照らされた横顔にはゾクゾクしたし、本人も公言しているようにダリオ・アルジェントの"オペラ座/血の喝采"を技術面で参考にしたというだけあって、ジャーロの要素も含まれていてホラーとしても素晴らしくよくできた作品。

自らが幼い頃に蝶を殺して作った標本を見て、最初の暗殺を終えた後には罪悪感を感じたと言ったものの、最後の暗殺を終えた後には罪悪感についての言及は無かったところに、彼女の中での決定的な変化が感じられた。彼女は冷酷な殺人マシーンへと更に一歩近づいたのかもしれない。
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