悠

ポゼッサーの悠のレビュー・感想・評価

ポゼッサー(2020年製作の映画)
3.7
頭に電極をブッ刺して他人の身体を乗っ取り、その人間の立場を利用し殺人を請け負う組織に所属する女を描くSFノワール。大衆向けの映画でそのコンセプトならば主人公がスタイリッシュに次々と殺人ミッションをこなしていくのでしょうが、そこはやはりクローネンバーグの血統。スタイリッシュとはほど遠いグロテスクで痛々しい殺人のシーンに加え、アートで不気味な演出が光りまくりで他の大衆向け映画との違いをまざまざと見せつけられます。殺人ミッションそのものよりも他人を乗っ取ることによる自我の崩壊に焦点を当てているため、ボディスナッチホラーでありながらサイコスリラーでもあるという思い切った内容で、この自我が崩壊しそうな時の演出が本当に気持ち悪くてたまりません。

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
悠