Uえい

ポゼッサーのUえいのレビュー・感想・評価

ポゼッサー(2020年製作の映画)
3.0
新作公開が控えるデヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン監督の映画をチェック。娘ケイトリンの初監督作品もアメリカでもうすぐ公開らしく、もの凄い家族だ。

本作は近未来が舞台なのか、他人の意識を乗っ取って殺人などイリーガルな仕事をする組織の女性ヴォスが主人公だった。冒頭からショッキングな殺人シーンから始まるが、設定や描写の新規性は無いように感じた。「ザ・セル」「マトリックス」「インセプション」などに近いイメージですんなり受け入れられた。

ヴォスは現実に戻るが、少し違和感を感じていた。そんな中、ある大企業ズースルーの令嬢の彼氏に乗り移り、社長と彼女を殺す司令を受ける。その男テイトに乗り移るが、違和感が増幅し、ヴォスとテイトの境が曖昧になる。テイトはズースルーで下働きをしているが、機械学習用データのラベリングの仕事をしていて今時な感じが良かった。

ヴォスは司令通り社長と彼女を殺すが、自分の体に戻るための自死をためらい、テイトの意識と混濁していく。その後一悶着ありながらも目覚めたヴォスからは、幼い頃感じた虫殺しの罪悪感が消えてしまっていた。

全体的にスマートで無機質な印象で父デヴィットとの差別化になっている。都市の高層ビルや、幾何学的に捉えた街並みと人など、都市や機械など大きなものに飲み込まれていく人々を描いているように感じた。

ヴォスが抱いていたミドルエイジクライシス的な心労も、プライベートを捨てて仕事に順応することで消え去っていたのが怖い。アノミー的な不安感も強く感じたが、社会由来の疎外感なのに自己を捨てて社会に身投げすることで解消するという解釈もできて怖い。
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