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ポゼッサーのtakaoriのレビュー・感想・評価

ポゼッサー(2020年製作の映画)
3.7
2024年167本目

触れ込み通りバイオレンス描写は大変どぎついものの、意外なほどスッキリ見られるアーティスティックな映画で、さすがデヴィッド・クローネンバーグの息子という感じ。ベッドに寝るタシャの「耳」をやたらとアップで映すような撮り方は、父のDNAを感じさせる。
他人の意識を乗っ取って(「ポゼッサー」のpossessとは幽霊が取り憑くことをいう)殺人を遂行し、自殺させて脱出することで任務完了、というこの設定も極悪な趣味の悪さで、こんなことを生業にしている主人公は当然のごとく破滅的な末路に至るが、その「イヤな予感」を見事に映像化していく手際はとても鮮やかだ。ラストの全く救いのない後味の悪さもむしろ清々しい。とは言え、主人公タシャにまったく人間的な内面がなく、単なる殺人ロボットとしか描かれないので、ターゲットとの人格の混ざり合いやその末の破局に今ひとつ緊張感のあるドラマが生まれず、やや緩慢な印象もぬぐえない。この映画は相当に後味が悪いが、もっと突き抜けて「胸糞悪く」できたはずである。
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