レインウォッチャー

MOTHER マザーのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
2.5
ひとことでいうならば、「ぬるい」なあ…に尽きてしまう感じ。

たとえば、劇中では少年が青年になるくらいの時間経過があるわけで、一応それに合わせて母たる長澤まさみも白髪メッシュを入れたり「シミできてる〜」みたいな台詞があったりする。のだけれど、いかんせんこれがカワイすぎるのである。もちろん、自堕落でその場しのぎでどうしようもないが歳をとっても男を誘い込む天然の色気だけはあって、という妖婦的なキャラであるのは理解するのだけれど、長澤まさみという人がもともと持っている「陽性」のカワイさが消えていない。ホームレスやってるとき、パチンコばっかでゴロゴロしてるとき、もっと崩れたメイクで汚すなりの攻めがほしかった。いきなり大声あげてキレたりとかもするんだけれど、そこもどうしても声が明るくて、親子依存状態の狂気というよりは近所の姉ちゃんのワガママみたいに見えちゃうんだよなあ…

そういう意味では阿部サダヲもどちらかというと陽性な人でそのまま演じているので、彼がいかにクズ男に徹しようともコント感が拭えない。長澤まさみと二人が映ると、もういっそボニー&クライドみたいに爆走逃走珍道中が始まればいいのにとか思ってしまったり。

あとは序盤終盤なんかのバイオレンス描写をいきなり変なカットで妙に隠すところとか…周平くんの返り血TシャツもおしゃれなデザインTくらいに見えるとか…色々あるのだけれど、要するに作品が言いたいことに対してアプローチが所々ぬるくって惜しかったなあという印象になりました。

通して描こうとしている、何度まわっても消費することしか覚えられない人たちのやるせなさとか、互いにすり減らし続けて最終的に諦めしかなく弛緩しきった親子の表情とか、その陰惨なようで起伏もあまりない、下の階からぼんやり聞こえてくるオーディオの低音のような「怠さ」それ自体はとても興味深かったです。そこを淡く溶かすのか、激烈に表現するのか…どちらにしても説得力ある振り切りが欲しかった。