レーズンバターサンド

MOTHER マザーのレーズンバターサンドのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.0
最初に。
公式サイトででかでかと「感動の衝撃作」と銘打っちゃってますが、嘘です。感動は1ミリもないです。

実話をもとにしてるんで、物語としての面白さよりリアリティの方を重視したんだろうな、っていう内容。これも映画の仕事なのだろう。
演出は所々良いなと思う部分があった。

まず長澤まさみの真っ黒な瞳。
全てのシーンであとから黒目を塗りつぶしたんじゃないかと思われるほど、徹底して目が死んでる。

息子役の2人が、幼少期と青年期で神社からおばあちゃんちにとぼとぼ歩いていくシーンがあんるだけど、その背中が全く一緒でびっくりした。
この2人の起用が奇跡。

阿部サダヲが戻ってきて狭いシェルタールームで踊るところとか、ああやって褒めてもらった時の事を覚えててすがるところ、それを許しちゃうところ、クズ人間あるある。

雨の日に妹にぶたれて泣くところ。
投げつけられたお金が数千円だったところ。拾う幼子のリアル。

「亜矢さんごめんなさい」の間違えられて消された字。

ラブホの屋上テントで勉強する所。横で眠る母親。

市役所職員が子どもに持ってきたレジ袋パンパンのカプ麺(しかも2袋。1袋でも充分な残酷さなのに2袋にした所だよね)

自動販売機のシーン。



あまりにもその境遇が理解不能で一切共感できなくて、見終わった直後は浅い感情しか出てこない。
けど多分自分は、これらの淡々と粛々と行き詰まっていく場面の様々を、時間を置いて何度も何度も思い出してしまうだろう。

多くの人にとって、駄作であって欲しい映画。
これに共感出来る人が少ない世界でありますように。