建野友保

MOTHER マザーの建野友保のレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.2
少年による祖父母殺人という痛ましい事件をベースにした、共依存の母子の物語。ワイドショー的には「バカな親子によるバカげた事件」には違いないのだが、バカな奴らと排除して切り捨て、バカな物語として消費することに慣れきってしまった現代日本人に、向けられた刃は実に鋭い。大森監督は、夏帆演じる福祉施設職員を通して、母子が背負ってきた悲しみや痛みへの寄り添い方を、描きたかったのだろうと想像する。
確かに「重い映画」ではあるけど、最後まで引き寄せられた。大森監督は映画「光」でもそうだったけど、台詞と台詞の合間の無言に、たくさんの物語を語らせる(感じさせる)のが巧い監督だと思った。僕たちはこの「重さ」に向き合わないといけない。今の日本には「重すぎる」テーマがあまりに一杯あるから。「重さ」を拒否していると、本当の「重さ」に耐えられないだろう。
そして最大の収穫は少年を演じた奥平大兼の存在感。将来の大器を感じさせる。
建野友保

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