ペンギン侍

MOTHER マザーのペンギン侍のネタバレレビュー・内容・結末

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

これほど長澤まさみに嫌悪感を抱いたことはありません。そしてこれは長澤まさみの新境地だと思いました。観るべき映画です。(自粛明けの1本目でした❣️)

娼婦とも淫乱とも違う、だらしない生活をした結果こうなりました、というだるだるで自堕落な秋子(長澤まさみ)の身体や肌。かつて「プロポーズ大作戦」というドラマでおっぱい揺らしながらウェディングドレスで走っていた長澤まさみが好きだったなぁなんて観賞後に思い出し、そして対比し、嫌な女を全身で演じ切った長澤まさみについて改めて思いを馳せました。

この映画で描かれているの共依存とは、互いに気がつかぬうちに深いところまで侵食していってしまう恐ろしい現象だと思います。そして、共依存を脱するには、環境への「疑いの目」が必要だと強く感じました。

秋子の子ども、周平も「現状はおかしい。自分のやりたいことがこのままではできないのではないか」と劇中で一度だけ環境を疑います。結果としてその疑いの目は周りの大人にひねりつぶされてしまいますが、あのときもう少し強情に意思を押し通すことができたのなら、もしかしたら未来は明るかったかもしれません。

この作品を是枝監督の『誰も知らない』と対比する方がいらっしゃったのですが、確かに似てはいるものの歪みの種類は全く異なるものでした。『誰も知らない』の場合は、母親は自分のわがままを押し通すために子どもを置き去りにし、子供の存在をなかったことにしているのに対し、『MOTHER マザー』ではどこまでも子供を連れまわします。これがネグレクトと共依存の差ともいえますが、あえて共通点を挙げるとすれば、子どもたちに「選択肢がなかった」という点です。

学校に行けず、友達もおらず、周囲に理解ある大人も少ない(大人と接触機会はあるのに助け出してもらえない)という状況下で、子どもたちの選択肢はひとつしかありません。愛情の矛先を生みの親に向け、母を選び続けることです。母以外の選択肢がある、と気づければほかの大人に助けを求めることもできたかもしれません。

『MOTHER マザー』の周平も、どんな悪環境でも母を選び続け(そうしむけてきたのは間違いなく秋子ですが)、母を助けることでしか愛情を得られなかった。母のことが好きだという自分自身が正解だった。だから、当たり前のように母を庇うし母の罪をかぶる。

もし、周平に会えるのなら「お母さんのことを好きじゃなくてもいいんだよ」と言ってあげたいと思いました。それ以外の選択肢もあるよ、と。

一点だけ、周平が秋子へ執着する様子は描かれてましたが、秋子が周平に執着する理由や背景がもう少し描かれるとよかったなと思いました。

あと、夏帆の目の下のクマが気になりました。
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