ぎゅう

ホース・ガールのぎゅうのレビュー・感想・評価

ホース・ガール(2020年製作の映画)
4.2
超常現象とパッチワークと馬が好きで
気立てはよいけれど少し内気な主人公
彼女は平和な日々を送っていたのだが

ある日から身の回りで不可解な出来事が起こっていき、現実の中に夢が侵食してくるようになっていく

周囲に訴えるが周りは理解してくれず...

始まりは、いい子だけれど人との距離感が内に篭りがちな人にある独特のちょっと変わった距離感をとる人だなという印象が

どんどん強迫的な観念が混ざって少し恐ろしくなっていくのだけれど

統合失調症の世界をその当事者目線で描いていて
観ている人も起きている出来事が現実か妄想なのかだんだんわからなくなる

この映画が不思議なのは
統合失調症の人が感じる恐ろしさをただ体験するように見せるのではなく、
実際に統合失調症だと疑われる主人公の信じている世界は事実だったととれるラストになっていること

時間軸は入り乱れ、(映画の冒頭で仲良しの同僚が店内で主人公と話している最中に馬をひく主人公が店の前を通るのを目撃する。冒頭では馬の一部しか映されず観客はラストになるまでその事実には気づかない)

さらには、主人公は宇宙人に召喚される


このラストの持って行き方で結局これは統合失調症の患者の話ではなかったの?どういうこと?
と理解に苦しんだのだけれどとても分かりやすい解説をネットで拾った。

http://cinemandrake.com/horse-girl
引用
「でもそういうスタンスにすることで本作は患者第一の立場を貫いており、しかも最終的に患者の力による自己実現を描き切ることにまで突っ切っています。こんなにも当事者を信用しきっている映画もなかなかないのではないでしょうか。たいていは家族の支えを配置しながら…とか、言ってみれば少し安全策を講じて当事者の人生を描いたりするものです。
統合失調症患者は弱い人ではないし、サポートが必要な人でもない。ましてや異常者でもない。自分らしさを真っすぐ生きることができる、普通の人間だ、と。」


彼女の妄想のように思われた世界は現実でさらにはその中で自身で解決策を導き出すというストーリーにすることで、
そういった症状で苦しむ人たちへのある意味希望的な自己実現と彼女たちは論理的に物事を考えられる決して狂った人たちではないということを表現したかったのか。と納得した

何より過去に脅迫観念で悩まされたことがある身としては、主人公の気持ちがすごくよくわかってしまい「私は狂ってるんじゃない!」と訴えかけるこの映画はそれだけで新しいし、凄いと思う。

ちなみに主演をしているアリソン•ブリーは脚本や制作にも関わっていて彼女の祖母は実際に妄想型統合失調症で母親は子供時代にトラウマで苦しんだという実体験がベースになった物語でもあるよう。
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