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ナイトメア・アリーのkitoのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.0
期待したストーリーとは全然違っていたけれど、面白かった。

前からどうもとっつきにくく感じていたギレルモ・デル・トロ監督だったけど「シェイプ・オブ・ウォーター」が面白かったので、この勢いで「パンス・ラビリンス」にも再挑戦しようと思った。しかし、現在Amazonでは配信していなかったので、予備知識なしに本作を観た。

「シェイプ・オブ・ウォーター」の類のファンタジー・テイストを期待したのだけれど、全然違っていて詐欺師の半生の物語だった。Wikipediaによると「ネオ・ノワールサイコスリラー映画。ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説『ナイトメア・アリー 悪夢小路』を原作とし、1947年の『悪魔の往く町』に続く2度目の映画化作品」とのこと。

脚本に監督と連名でキム・モーガンとあるが、彼の妻だそうだ。47年の映画版が傑作とのことで観たいのだけどこれもAmazonの配信では見つからなかった。最近のトレンドなのか、本作もモノクロ版が一部の劇場で公開されたそうで興味が湧く。

カーニバルが舞台の前半と街に出てからの後半でテイストがガラッと変わる。主人公のブラッドリー・クーパーが謎めいた放火をするオープニングのシークエンスが幻想的で一気に引き込まれた。その後主人公が流れ着いたカーニバルでの前半にとにかく惹かれた。トニ・コレットとウィレム・デフォーとの絡みも、ヒロインを守ろうとするブルーノを演じるロン・パールマンもイイ。後半ではBTTF3のメアリー・スティーンバージェンがお久しぶりだ。

移動カーニバルやサーカスというと大昔に読んだレイ・ブラッドベリーのファンタジー小説「何かが道をやってくる」のイメージが原体験にある。不気味な見せ物が並び、普通じゃない何者かが夜の闇を闊歩しているイメージに恐怖した。本作でもホルマリン漬けの胎児・エノクが不気味すぎる。

現実の日本では移動カーニバルなんてまず見ることがないと思うけれど、映画や小説に出てくると今だに軽くトラウマ的なものさえ感じているーーって子供か。怖くはないトム・ハンクス「ビッグ」のゾルダーならイイんだけどなあ。

一方、後半は街に出て詐欺を続けた主人公がさらなる欲をかいて破滅していく様が描かれる。これはもうお約束すぎるテンプレ展開だけど、そうと分かったうえでも話の先が気になるのは、同監督の表現手法にハマったのだろう。

先日「TAR」で圧巻の演技を観たばかりのケイト・ブランシェットのインテリ悪女っぷりが凄い。私みたいな騙されやすい性格の小心者でもこの性悪心理学ドクターはさすがに胡散臭いと思うけどなあ。ブラッドリー・クーパー演じる主人公には類友なのだろう。まさに怪物が怪物に喰われるお話だった。

「FILMAGA」のネタバレ解説では、ホルマリン漬けの胎児・エノクとエディプスコンプレックスについて考察がなされていて、なるほどなあと思った。
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