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無頼のkouのレビュー・感想・評価

無頼(2020年製作の映画)
3.5
井筒監督の8年ぶりの最新作にしては周囲の反応が少ないことに驚いている。数々の名作を作り上げた監督が、集大成とまで言っている作品を見ないわけにはいかない。本作はある少年がヤクザの組長となり、任侠道を引退するまでの約30年間を描く。1956年から始まり、戦後復興期、高度経済成長期、バブル経済期とその後が描かれている。

映画自体はこれまでの井筒監督の作品とは少し違う部分がある。細かく場面を切り取り、それをつないでいく。ヤクザ達の成り上がり、そして抗争、時には新興宗教団体との関りを細かく時代を区切り描くのだ。そしてそれに合わせて日本で起こった事件、出来事を重ねていく。

やはり役者陣の立ち振る舞いは見事だ。数多くのキャラクターがいながらも、どの人物も際立つ。井藤組の組員の面構えのかっこいいこと。男の顔とはこういうことだよなと再認識させられる。複雑なストーリーもとても分かりやすく描いているのも流石。

井筒監督の熱量の高さ、どんな時代でも寄る辺なく生きろと喝を入れられる作品だった。この時代だからこそ、描くべき作品なのかもしれない。
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