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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のkouのレビュー・感想・評価

4.5
不安や恐怖というのは人間の想像の中こそ、より煽られて増幅していくもの。それでいて、いざ目の前に恐ろしい事柄が現れようとすると別のことに意識を向ける。現実から逃避するように。

突如として投げ込まれるクジラの存在と煽動者プリンス。それが波打つように、暴動が起きる。弱いものを標的にし、街は崩壊する。

恐ろしいのは、その悪夢のような状況の中で主人公だけが狼狽えて行動しているように見える点だ。暴動を前に警察署長は女とダンスを踊る。暴動の後逃げ惑うのは主人公だけだ。

今の時代に見ると、なんとも現実感を増して見える。恐怖や不安がより攻撃的な結果として他者への排除へとつながる。先見的な内容となっているのも興味深い。カットの長さはより映画を見つめる視点を意識させる。素晴らしかった。
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