kouさんの映画レビュー・感想・評価

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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.5

家族、というよりもやはり、Toxic masculinityについての話であった。父親によるこうあるべきという基準の中でしか生きられない男達。強さとその先の守るべきものの中で葛藤し、悲劇へと進んでいく>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.5

正直ピンと来なかった。確かにIMAXで見ていないという事が今作を楽しめなかった理由ではあるのだが、ビジュアル的な魅力というよりも、今作の新しさをあまり感じられなかったというのが1番の理由かと思う。>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.5

もしもあの時に…という事を考えれば考えるほどに、もしもの人生が無いことの喪失感が募る。手にしない事を実感するのだ。運命的な2人の、20年もの関係を描いた作品。

とても奇妙で不思議な縁や運命によって人
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

序盤の理不尽な展開と現実なのか妄想なのかわからなくなる様はコントのようでもあり面白かった。ボーがとにかく酷い目にあっていく、聖書のヨブ記を元にした、神のような存在により苦難や絶望を与えられた男の物語で>>続きを読む

ダイヤルMを廻せ!(1954年製作の映画)

4.0

かなり展開が早く、一挙一動の重みがある作品であると思う。改めて娯楽性の高い、面白い作品で、展開がどんどん進んでいき、常に飽きさせないのは流石。

ほとんどアパートの一室だけで、会話が主であるのだが、そ
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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.5

不安や恐怖というのは人間の想像の中こそ、より煽られて増幅していくもの。それでいて、いざ目の前に恐ろしい事柄が現れようとすると別のことに意識を向ける。現実から逃避するように。

突如として投げ込まれるク
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

エリセの新作が公開されるという映画史的な事件に立ち会えた事にまずは感動する。そしてあのエリセが晩年になった時に作る作品は、自分自身の人生をわかりやすく反映させたものであるというのも面白い。

まさに監
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ペリカン文書(1993年製作の映画)

4.0

車を使った爆発、いかにもな暗殺者達というのはやはりフィクション感はあるのだが、その執拗さや強大な権力によって事実を押さえ込んでいく様は既視感のあるものになっている。

唯の女子大学生が調べ上げた文書が
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ベニスに死す(1971年製作の映画)

4.5

美しさに呑まれ、自分の人生を破滅させていく。まるで悪魔のようにその少年はアッシェンバッハに取り憑いていくのだが、それは少年の意図ではなく、無意識のうちにアッシェンバッハが破滅していく。

面白いと思う
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エル・スール(1982年製作の映画)

3.5

少女の目から見た世界。どこか陰鬱とした雰囲気を持ち、心の中に後悔を常に抱えているような父親。そんな父親と少女の関わりについて描いている。どこか温かみのあるシーンもあり、ミツバチ…よりも柔らかな印象を受>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

真実はある筈だが、それは結局当事者にしかわからない。人間の記憶や証言は曖昧で、何もかも確かなものはない。観ている側が映画の中の裁判を傍聴しているように、揺れ動かされながら話は進んでいく。

観客は夫の
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ワーロック(1959年製作の映画)

3.5

ヒーローとは決して言えない人間の複雑さ。その中で新たなヒーローが生まれる瞬間。ある意味生きていく中で汚れながら生きてきた男が、バトンを渡す話でもあると思う。

善悪では語りきれない人間模様を描き、単純
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

相変わらず変な作品を作る監督だなと改めて思う。そこがロブスターを初めて見た時から惹かれつつづけるところではあるのだけれど。しかしながら描かれる内容は今の時代ならではの内容であり、女性の選択に関する作品>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

社会の生きづらさ。皆普通に問題なく生きているように見えるのだが、多くの人が辛さや悩みを抱えながら日々を生きているのかもしれない。今作の日常の音が、時に攻撃的に聞こえるのも見事だった。なんて事のない生活>>続きを読む

嵐ケ丘/嵐が丘(1939年製作の映画)

4.0

古典的な悲劇の物語。徹底した運命の残酷さと、かつては輝きに満ちていたはずの男女が悲劇的な最期を迎えるまでの流れが見事。

悲惨な運命をもつヒースクリフが、周りのすべての富裕層への憎しみを持ち、彼らに復
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.5

北朝鮮からの脱出、実際の家族の様子を追った映像も、現在の北朝鮮の様子を映す映像も、どれも過剰な情報量で描かれる。子供や老人を連れての中国からタイまでの過酷な移動はリアルな緊張感に包まれる。本当に貴重な>>続きを読む

私は告白する(1953年製作の映画)

4.0

やはり間違いなく面白いサスペンスだなと思う。主人公の神父は犯人の告白の内容を頑なに話そうとしないが為に、自分が犯人と疑われてしまう。

本作の主人公が聖職者であるが故に告白を口外しないようにする。しか
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バラ色の選択(1993年製作の映画)

3.5

ホテルのコンシェルジュという職業から、誰かの役に立とうとする姿、そしてそのホテルを利用する人々との交流を描いている作品。やはり時代性を感じる作品ではあるが、後半の伏線を回収するような展開は痛快である。>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.0

様々な人生のままならさ。家族というしがらみや、自分自身の才能への苦悩。他人への嫉妬。シンプルな希望や喜びを描いているわけではないからこそ、人生について描いている作品である。

時に猫が傷つけた鳩が自分
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エターナル・ドーター(2022年製作の映画)

3.0

ティルダ・スウィントンの演技は素晴らしく、やはり繊細で見事だと思う。ホラーテイストで進めながらも、やはり母と娘の話に集約していく。ただこの辺りは、観客の予想を超えてこない。終盤までいっても驚きや特筆す>>続きを読む

小さな恋のメロディ(1971年製作の映画)

4.0

音楽と映画の絶妙な合い方、少年と少女のまるで大人達から逃げるような結婚式の場面はファンタジックな雰囲気すら漂う名シーンだと思う。やはり今見ても素晴らしい。

音楽と映像がマッチした作品は今ではオーソド
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カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.0

まさにポール・シュレイダーらしい作品。過去にトラウマを持つ主人公のいつか爆発するであろう緊迫感とそこから起こる悲劇。序盤の不吉な雰囲気が漂いながら、終盤に悲劇が起こるまで、どこか必然にも思える展開が見>>続きを読む

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

3.0

独特な雰囲気のある作品であるし、レニングラード・カーボーイズという強烈なキャラクター達が面白く、気楽に楽しく見れる作品で、唯一無二な雰囲気のある作品となっている。

なんともシュールな世界観であるのだ
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真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.0

冒頭の自殺のシーンからなんとも言えない閉塞感がある。見ているものまで寒さを感じるようなオープンカーの描写が見事だ。金も盗まれ、何もかもを失った彼が出会うのはシンクマルマザーの母親。

展開が早く、省略
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

いつも通りの孤独な男と女の出会い。すれ違いや障害が2人を遠ざける。その背後に流れるのはウクライナの悲惨なニュース。悲惨な世界の中で、彼らが選んだ先、自分を必死に変えてまでも選んだ未来に落涙する。

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(2023年製作の映画)

3.5

数々の歴史小説で描かれるような武士としての尊厳を持った人物たちでなく、信長は狂気を増し、秀吉はプライドなく騙しながら気を伺う。狂人にボコボコにされる明智光秀が、本能寺の変に至るまで、信長の跡目争いをベ>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.5

色々な部分でなんだか惜しいなと思う作品であったと思う。描きたいことはわかるのだが、水フェチという一点に集約した事で、狭く閉じてしまっていると感じた。

今作の中で描かれるように、自分が異常なのかと思う
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ザ・ローリング・ストーンズ/レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー(1982年製作の映画)

3.5

1981年のツアーの様子を収録。この時点でストーンズのメンバーは30代から40代で、今から考えるとキャリアの中盤というのが驚かされる。ミック・ジャガーの動きも勿論キレにキレていて、キースの立ち振る舞い>>続きを読む

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

3.0

太平洋戦争に突入するまで、そして突入してから。発達障害を持つ子供がその中で活き活きと学べる学校を見つける。それぞれの個性がありながら、子供の柔軟性と大人たちの理解、時には手を放して遠くから見つめる姿を>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

2.5

まずは杉咲花の演技が素晴らしく、ここまで嘘くさく無いリアリティを持っていることで、今作が忘れられない作品になった。本当に見事、冒頭のプロポーズの件で完全に持っていかれ、ケーキ屋での件は圧巻だった。>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.5

友情についての作品であり、弱者、持たざるものについての作品であると思う。やはり搾取され、強いものが勝ち進んでいく世界で、弱いものについて焦点を当てている作品に他ならない。

資本主義の無情に搾取される
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.5

渋いロックの名曲と共に、自分の世界を持つ男、ルーチンのように朝起きて、トイレ清掃の仕事を行い、銭湯に入り、酒を飲み寝る。その中で些細な出来事が起こる。起伏は少ないながらも、喜びや悲しみが描かれる。>>続きを読む

エデンの東(1954年製作の映画)

4.5

親に愛されたいと言う気持ちが暴走する青年。兄と比較され続け、自分の価値がないと感じ、自暴自棄になる様。まさにジェームス・ディーン自身が常に悩み続け、それが立ち振る舞いにも現れるようだ。この繊細さ、それ>>続きを読む

ミザリー(1990年製作の映画)

3.0

事故を起こした人気作家と熱烈なファン。ある作品を愛しすぎるあまりにその作品自体までも変えようとしてしまう。今でも熱心なファンにありがちな事ではあるが、そこからここまで面白いホラーに変えていくのは見事。>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

3.5

老夫婦の日常が描かれ、そのリアルさにやはり主演2人の演技力に驚かされる。描かれる日常の何とも現実的で、それでいて残酷で恐ろしいことか。暴力の描写はないが、それでもこれほどの怖さを描けるとは。

かつて
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ナポレオン(2023年製作の映画)

4.0

ナポレオンの歴史を満遍なく、そして何よりも彼自身が一人間として弱さや小ささを持つ人物であったかに焦点を当てる。妻であるジョセフィーヌとの関係性、彼女に囚われるような姿こそ、おそらくリドリー・スコットが>>続きを読む

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