Laura

情婦のLauraのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
3.8
俳優タイロン・パワーの事実上の遺作。同名の父の後を継ぎ、戦前・戦中の20世紀FOXの看板俳優として活躍した彼ですが、憂いを帯びた美貌は知られても、演技派として広く認められることは遂になかったように思います。本作『情婦』でも、クレジットこそ最初に名前は出るものの、作中ではマレーネ・ディートリッヒ、チャールズ・ロートンの強烈な役どころに一歩譲り、タイロン・パワーの映画として印象づけるものにはなっていません。これが遺作と思うと、やはりファンとしては寂しいところです。

映画としては、ワイルダーのサスペンス。ヒッチコックは『情婦』を彼の作品と思い違いした人から感想を言われて辟易したことがあるそうです。ヒッチコック的なタッチとは全く違うように思いますが、もしかしたら積極的なブロンド女と黒髪の没個性的な美形男性という、主演の組み合わせがそれらしかったのかも知れません。誰もが驚くラストのあと、エンドロールと共に「この映画の結末を観ていない人に口外しないでください」というアナウンスが入る、当時としてはなかなか珍しい趣向でも知られます。
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