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ファーザーのJIZEのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.4
年老いた80歳の父親が認知症を患い次第に自身や家族のコトがあやふやに記憶や時間が混乱してゆく様が描かれる。まず主演の名優アンソニー・ホプキンスの認知症の兆候の老芝居が、"サイコスリラー"のような冷酷さを画面の四隅まで感じさせる。父親が饒舌に喋るシーンは、どれも張り詰めた空気感と周囲の戸惑うような落ち着かなさがある。対話しながらも混乱と対峙している。いわゆる精神の正常と奇妙の狭間を、ホプキンス演じる主人公のアンソニーがまざまざと変幻自在に体現している。それが肉体的な弱さか精神的な弱さ、なのか。また世界中で上演された戯曲の映像化ともあり、その世界観が併せ持つ崇高さや偉大さみたいな風味は、どこかしこにある。父親を理解する娘役のオリヴィア・コールマンとの軽快な会話劇も見どころ。認知症の実像を主題に観客へ感情移入させるそのテーマ性は、一見の価値アリの映画となっている。
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