アカデミー賞主演男優賞で番狂わせして話題だった本作。
認知症体験ができる映画とは聞いてて、映画で認知症体験？？？っていまいちよく分からなかったけど、見てみたらそれはそれは納得。
だって、事実だと思ってたことは次のシーンでは事実じゃなくなってるし、知ってる人と思ってた人は知らない人になってるんだもん。
言葉にしたら、頭フル回転系のサスペンスっぽくも見えるけど、そういうサスペンス、ミステリー的な感じでは全くない。
事実を教えてくれる人はいる。
でも、教えてもらった事実は、次同じ話題が上がった時には忘れてしまってたり、あるいは別の認識とすり替わってしまっている。
認知症って、ただ物忘れが激しくなっていくだけじゃないんだ。
過去の強い記憶は何度も今の現実と重なってしまうし、それが時に幻覚となって現れることもある。
自分の認識と周りが教えてくれる事実のギャップに苦しむアンソニーを見て泣いてしまった。
自分じゃどうしようもないし、簡単に治せるものでもないから、本当にもがきようもない、不甲斐ないこの気持ち。
ただただ苦しい。
もちろん介護する側の苦しみもよく伝わってきた。
突然情緒が変わったり、自分のことすら認識してもらえない悲しみや辛さは、アンの目が1番語っていた。
勉強になるとかそういう作品でないと思うし、そんなことはあまり思わなかったけど、認知症について分かることも多かったし、感じたことのない視点から観ることができて、評価されるのもとても納得できるすごい作品だった。
