Kenjo

ファーザーのKenjoのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.2
アカデミー賞ノミネート作品。
割と前評判もよくて楽しみにしてた。
アンソニーホプキンスさん主演の認知症を題材としたドラマ。
脚本の段階からアンソニーホプキンスを主演にすることを考えてアンソニーと名前をつけ、その後にオファーを出した脚本家とプロデューサーからすごい。

見ようと思って映画館に行ったら、小さいシアターしかない上にかなり埋まってて、プレミアムシートで鑑賞した。ソファーフカフカで最高。もはや寝るなら最高な環境だなーと思ったけど、ちゃんと映画が面白くて寝かせてくれなかった。

最初から、アンソニーの娘なる人物が代わる代わる現れ、夫がいたりいなかったり、パリに行ったり行かなかったりと、認知が歪んでいく感覚になる。
最初は愉快なアンソニーの味方になったりするものの、気分屋でわがままなアンソニーに嫌気がさしてきてしまう。視聴者ですらそうなので、認知症の親を持つ娘はなかなか大変なんだろう。

認知症という病気は、個人的にとても怖いと思ってる病気で、今までの記憶が消え、自分の娘や、もはや自分が何者かまで忘れてしまうので自我が崩壊しそうになり、生きてる意味を感じなくなってしまう。
自分が自分らしく生きれなくなったなら、そのまま生きるほうが苦痛だなと思う。
生きてればいいことあるかもと思うこともあるが、「苦しみこそがこの世の感情の中で最も排除すべきことだ」と言った反出生主義のベネターの考えに賛成してしまう。
自分が老いるまでに、できれば安楽死が合法化しているか、認知症に効果的な治療が生まれていて欲しいなと思う。

もし今までの記憶が全てなくなってしまったら、なにを糧に人生を生きていくんだろう。最近、記録よりも記憶に残そうと生きてるんやけど、認知症になったら自分が生きた証が全て失われそう。

この映画のエンディングこそが最も悲しくなる瞬間となる。どんなホラー映画よりも怖いエンディング。是非劇場で人生の辛さを感じて欲しい。

脚本と映像の組合せがとても綺麗だった。
シリアスな感じだから途中飽きるかと思ったけどそんなことはなく、伏線らしきものを追いかけてるうちに終わった感じ。
娘2の方の話もう少し掘り下げても良かったのかなと思った。
Kenjo

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