今日？昨日？過去？いつ？何時？家？病院？ここはどこ？不審者？娘？あなたは誰？何故？いつまで？あぁ…夢うつつ…。
終わらない悪夢を見続ける97分。これが終わりのある現実の97分でほっとした。
視覚にも聴覚にも頼らずにこんなにも人を怖がらせることが出来るなんて。震える。観客に退屈されないかと怯んでしまいそうなところを、首尾一貫している。淡々と、静かに進行するのに、息をするのも忘れるくらいに引き込まれる。劇場中が集中していた。
きっと誰もが、誰かに重ねながら観ている。祖父母なのか、両親なのか、ご友人なのか、はたまた将来の自分なのか…。だからこの感情が"怖い"の一言で片付けられない、胸を締め付けられる想いに駆られる。
音楽もほとんどなく、モノローグもない。限られた登場人物の会話の応酬。アンソニー・ホプキンス氏に対して「演技じゃなくて素なのでは」なんて皮肉な声も見かけたけど、これってある意味最高の褒め言葉。老いる恐怖と哀しみをを感じる一方で、彼を見ながら歳を重ねることへの畏敬の念を抱かずにはいられない。
