あいす

ファーザーのあいすのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.3
一言で言うなら”シニアに優しくなれる映画”だった。

とても良い映画だったのは、そう。
なんだけども。
あの……しんどいです。重い。
誰が誰を見ていても他人事じゃない。
私は物語を咀嚼するのに精一杯で、キャラの背景とかカメラワークに潜む伏線みたいなモノを気にする余裕はゼロでした。
リピしてもいいと思いつつも、気軽に見られる作品では無いです。

認知症の怖さ。
罹った本人の苦しみ。
そんな脳が解釈する世界は、周りの人達と食い違ってく。
意思の疎通が出来なくなる。
相手は自分が突然おかしなことを言い出したと思うし、それが続くからイライラしてくる。
けど、本人にとってはそれが事実なんだよね。
今目の前で起きたこと。事実なのに、誰も「そんなこと起きてない」って言う。
今さっき話してた人が居なくなると、途端にみんな「そんな人いない」って言うし、別の人を指して「この人のことでしょう?」と言ってくる。
本当のことを言ってるのに、誰にも信じて貰えない。
それを拗らせて孤独になると、症状はどんどん進行していく…悪循環……。

何か劇的に事件が起きたりはしなくて、けど目に映るものや主人公の言うことを信じていいのか分からなくて、そういう緊張感がずっとある作品でした。
面倒見る家族側も認知症になる立場も、いつかは我が身。
今後を考えさせられました。
自分の目に映るものが事実じゃなくなる病。
孤独で奇妙な世界線に取り残される病。
怖すぎます。

けど、一度は見てみて欲しいです。
あいす

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