認知症に関して漠然とした知識はあっても、ここまで具象化されたリアルに触れて、真剣に自分事として刺さった。精神疾患の病気もこんな感じなのだろうか。導入はサスペンスチックだが、これが人間のリアルなのだろう。切り取り方は違うが、これを観た上で改めてジャックレモンの晩秋を見返してみたい。
混乱、恐怖、孤独感。認知症の人達はこんな世界に生きているのかと。忘れていくだけじゃない。自分が自分でなくなっていく怖さや怒り、やるせなさや寂しさ。演技力云々というより、どこにでもほんの身近に居うるある人物の再現VTRを観ているようだった。現にアンソニーホプキンスは「父を演じただけなので簡単だった」と言っている。
人間は何も持たずに生まれ、与えられ、最後はまた少しずつ失っていき、無に還るのだろうか。そんな事を思った。とてつもなく怖いが、人として生まれてきた以上自分にもいつか順番が回ってくることになるだろう。逃げることも出来ないが、受け止められるかどうか…
"すべての葉を失っていくようだ"
"だが腕時計が手首にあるのは分かってる。旅に備えて。そうでないと…見失ってしまう。心構えができているかどうか…"