酩酊石打刑

ファーザーの酩酊石打刑のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.2
〈身につまされ〉〈明日は我が身か〉系。
ミステリやファンタジーのパラレルワールドを思わせる映像世界。
認知症に関して世間ではひどく悲劇的で悲惨なイメージが先行しているが、果たしてそうなのだろうか?
徘徊とか自傷他傷とか糞尿にまみれたりとかの家族内での実害がなければ、それほど悲惨な出来事ではないような気がする。施設にに入り適切なケアーがあれば。
認知症と老化による記憶、意識の混濁は個人差はあるもののある程度必然的なような気がする。今作の老人は施設で静かに生活していたようだし。
本人は時計を盗まれたとか、ダンサーをやっていたとか、絵描きだったとか、若い女性が来たらはしゃいでみたり、医師が来るとつらく当たったりと、妄想、想像をそれなりに楽しんでいるのではと思った。一つの設定の中で逃れられな苦悩に縛られている現実社会と違って。
『私の頭の中の消しゴム』その他認知症物の物語は数多くあるようだが、ある種観る者を感動へと誘う、涙腺刺激装置のような気がする。
若い女の子が来ると、ウイスキーを飲みダンサーだったと嘘をつき踊ってみせる、楽しい日もあったりするのでは。それがベッドの中での夢想だったとしても。