MiYA

キネマの神様のMiYAのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
4.0
「家族はつらいよ」で限界が見えた山田洋次監督が、ここに来て新たな傑作をものにするとは驚きです。

沢田研二が演じる、家族に迷惑をかけまくる放蕩親父は、山田監督の過去の映画にいくらでも出てくるステロタイプで、またこれか、と見る気がなくなります。

ところが、彼の若い頃を描く回想シーンが素晴らしいのです。山田監督の実体験をベースにしたであろう、昭和の時代の映画制作現場の情景がとても活気に溢れ、生き生きしています。映画に情熱を燃やしながら苦い挫折を味わう主人公(菅田将暉)のドラマにも引き込まれます。また、北川景子演じる昭和の美人女優の役が見事にハマっていて、うっとりするほど魅力的(本作最大の殊勲は彼女ですね)。

そして、映画と現実、過去と現在とがクロスオーバーして、主人公にささやかな幸福が訪れる、ファンタジックなラストは見事です。

全編に溢れる映画愛が素晴らしく、山田監督が得意分野で潔く勝負した傑作だと思います。

BSプレミアム「プレミアム・シネマ」にて。
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