がちゃん

キネマの神様のがちゃんのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.0
映画人の情熱と郷愁を詰め込んだ山田洋次監督作品。

かつて、映画の名監督(小津安二郎がモデルと思われる)の助監督についていた男・ゴウ(現在:沢田研二/若き日:菅田将暉)が、年をとり、今やアルコールとギャンブルに狂う老人。

若かったころに恋に落ちた食堂の女の子と結婚して、娘一人孫一人を儲けるが、その堕落ぶりに家族からは愛想をつかれかけている。

かつての恋敵は今映画館“テアトル銀幕”の支配人。
今でもゴウとは腐れ縁。

かつて映画界に挫折したゴウだったが、孫がかつてゴウが書いたシナリオを見つけて二人で脚本賞に応募しようとするのだが・・・

私は山田洋次監督作品では、『馬鹿が戦車でやって来る』(1964)を最高に評価しています。
予想もつかない痛快な喜劇で、本当に上手にこなす監督だなと感じました。

山田監督は観客が泣いたり笑ったりするポイントを寸分の狂いもなくついてくる。
それが例えば寅さんシリーズなどの永遠のマンネリ作品にお客さんがついてくるポイントだったともうのですが、逆に言うと、先の展開が安易に読めてしまうところもある。

本作はこれが悪い方に出た。
あまりにも予定通りに進み過ぎた。
少しでも映画を知っている人ならみんな読めてしまったのではないのかな。

ポイントとなるゴウの書いたシナリオ『キネマの神様』。
これがウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』と全く一緒だったのも興ざめポイント。
盗作が疑われるレベルだったなあ。

そして映画への郷愁という意味でも、『ニューシネマパラダイス』や『グッドモーニング・バビロン』『ラストショー』、
そして、『カイロの紫のバラ』などを先に観ている人なら、二番煎じ感は否めないだろう。

さらに言うなら、
古き良き時代の映画にノスタルジィを感じる作品は他にもたくさんある。
この作品はその点でうまくない。

これが松竹映画100年記念作品というのは残念だったね。
急遽代役となった沢田研二や若き日のゴウを演じた菅田将暉を始め、芸達者を集めたキャスティングがもったいない。

一番泣けたのは、ラストクレジットで、『さようなら志村けんさん』とながれたところ。

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