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ライド・ライク・ア・ガールのsymaxのレビュー・感想・評価

3.6
"国の動きを止めるレース"と言われる程、オーストラリア競馬最大のレースで、歴史と伝統ある"メルボルン・カップ"

そんな大レースに果敢に挑んだ一人の女性騎手がいました…その名は、"ミシェル・ペイン"

ミシェルは、10人兄姉の末っ子で生まれて間もなく母が不慮の事故で亡くなり、調教師をしている父に育てられ、自然と騎手を目指すようになります。

父の元で騎手としての歩みを始めますが、その道は平坦では無く、また、ある意味、男社会の競馬界の中で、"女性騎手"として色眼鏡で見られ、歯痒い想いをしながらも、徐々にその才能を開花させていきますが、初めて任されたG1レースで落馬し、選手生命どころか、命に関わる大怪我を負ってしまいます。

それでも騎手としての情熱を失わなかったミシェルは、周りの反対を押し切り現役を続け、やがて運命の馬と出会い、いざ"メルボルン・カップ"へ…

非常にドラマチックな実話を映画化していますので、かなり胸熱な展開です。

ただ、ミシェルが"メルボルン・カップ"に出場するまでのドラマがやや駆け足で、もの凄い試練と苦難の連続なのに、なんだかアッサリしてるのは、映画という尺の中では仕方がないのかもしれません。

監督さんも女性である事もあるのかもしれませんが、競馬界の女性蔑視の描写には力が入っていて、男の私が見ても不快で、これ悔しいだろうなとこちらも歯軋り状態でしたが、ラスト、それこそ、ゲスな男連中を文字通り"ギャフン"と言わせる痛快さは、本当に気持ちが良いです。

ミシェルを演じたテリーサ・パーマーは、見た目はギリギリ騎手なんですけど、馬に乗ってる姿勢は惚れ惚れする程美しいんです。

忘れていけないのは、パパを演じたサム・ニールです。

円熟の域に入った演技で、競馬のイロハを教える調教師、妻を失った夫、子を失う恐れを抱いた父
それぞれの顔を見事に演じ分け、作品をビシッと締めています。

また、ミシェルのすぐ上のダウン症の兄で、作品の要の存在と言えるスティービー・ペインをまさかの本人が演じるというウルトラ展開なのですが、これが凄く良いんです。

まぁ、自分自身なので、普段通りにしていれば良いのかもしれませんが、プロの俳優顔負けの演技力を見せてくれていまして、一番美味しい所を持っていってしまったのではないのでしょうか?
"にかっ"という笑顔が実にチャーミングでした。

競馬の話なので、レースシーンは劇場の大きなスクリーン向けで、迫力が違いますから、映画館で見ることをオススメします。

私は競馬の事は、殆ど知らないのですが、競馬の知識が無くても余り気になりませんでした。

一人の女性が偏見や苦難を忍耐力と熱い情熱で乗り越えていく話ですから、見た後の痛快さと爽快感は、半端なく心地良かったです。
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