SANKOU

チィファの手紙のSANKOUのレビュー・感想・評価

チィファの手紙(2018年製作の映画)
3.6
映画『ラストレター』とほぼ内容は同じだが、こちらの方が公開は先とのこと。先に『ラストレター』を観てしまったからか、どうしてもそちらの印象が強く残ってしまっていたために、新鮮な感動は得られなかったのが残念。
小説版『ラストレター』も読んでいたのだが、こちらはあまり面白くは感じられなかった。設定はとてもユニークで面白いものがあるが、ドラマとしては深みに欠けると思ってしまった。その点映画『ラストレター』は爽やかな後味の残る作品に仕上がっていて、シナリオの面白さよりも人間模様が際立っていて、これはこれで上手く世界観がまとまっていて好きだった。
もちろんただポップなだけでなく、芸術作品としても優れていたと思う。
そしてこちらの中国版の『ラストレター』は日本版に比べると、ドラマとしての抑揚をあまりつけずに、純粋に登場人物がその世界を生きているのだということが実感出来るようなリアルな作りになっていた。
同じシナリオでもかなり印象は違う。心なしか光の捉え方は相変わらず美しいが、こちらの作品の方が少ししっとりとして暗めの印象を受けた。
正直言うとドラマとしてはそこまでの面白味を感じられない作品だけに、こちらの方が少々退屈だった。
ひょっとするともっと余分な台詞をそぎおとした方が中国版の世界観には合っていたのかもしれない。
日本版に比べると全体的に整理仕切れていない印象も受けた。
日本版と大きく違うのは弟がなくなった姉の子供であるという設定で、彼は母親が自殺したということに隠しきれないショックを受けている。
彼が家出をするというエピソードもオリジナルにはないものだ。
チイファと夫が仲直りするために糸電話を使うというエピソードはほっこりさせられて良かった。
細部のひとつひとつの演出はとても丁寧なのだが、正直少しあざといぐらいの演出の方がこの作品は感動出来るのだと思う。
ロウイエ監督作品でもお馴染みのチン・ハオや、チイファ役のジョウ・シュンは容姿が綺麗なだけでなく、やはり確かな演技力のある俳優だと感じた。
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