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泣きたい私は猫をかぶるのsatoshiのレビュー・感想・評価

泣きたい私は猫をかぶる(2020年製作の映画)
3.3
 岡田磨里脚本のオリジナル作品。監督は『ユンカース・カム・ヒア』や、TVアニメ「美少女戦士セーラームーン」、「ARIA」や「おジャ魔女どれみ」シリーズの佐藤順一とスタジオコロリド所属の柴山智隆。そして制作は『ペンギンハイウェイ』が記憶に新しいスタジオコロリド。座組的に期待値が高く、楽しみにしていました。新型コロナウイルスの影響で公開が中止になったので、NETFLIXで鑑賞しました。

 私が本作を観て最も連想したのが『ユンカース・カム・ヒア』でした。あれは犬視点の話でしたけど、こちらは猫視点。しかもその猫ってのが主人公のムゲが猫店主によって変えられた姿であり、片想いしている日の出に可愛がってもらうために変えてもらっているというのが変化球。本作はこのムゲが世界を少しだけ肯定する話という、要はいつも通りの岡田磨里で、女の子の話であるということ。冒頭のアイスのアレもアレの隠喩なんだろうし。

 ムゲと日の出は2人とも「居場所がない」人間です。ムゲは家庭内で問題を抱えているし、日の出は陶芸家になる夢を家族に言えずにいます。ムゲが猫になる理由は日の出に可愛がってもらうためですが、それは同時に複雑な家庭環境、そして世界から逃げるためでもあります。ムゲは、日の出以外は案山子に見える世界で生きていて、それはつまり、日の出以外には世界に興味がないということ。それは家庭環境が影響していて、猫になって、1回人間やめかけることで家族に実は愛されていたことを知り、現実を受け入れて生きていきます。そして日の出もいつも真っ直ぐな日の出に感化され、自分に素直になります。つまり本作は、現実逃避をしていた女の子が現実に帰還する話なのです。

 他にも良かったのは、終盤の怪しい猫の世界です。何かまるっきり『千と千尋の神隠し』っぽい感じで、そもそも全体のストーリーも『猫の恩返し』だったんですけど、そこで繰り広げられるアクションや動きはとても面白かった。上下の移動や飛行シーンとかもあって、映画館で観ても全然良いと思える作品でした。それだけに配信限定になってしまったのが惜しい。

 ただ、台詞での説明が多かったり、展開的にももたついている箇所があったりしたりと、作品的にも惜しい点が多いです。しかし、費やした時間分は楽しめる作品ではあるし、岡田磨里さんは相変わらずだったので満足です。
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